クリーミーな『#nofilter』に配合されている成分

 “Nobody”を楽しげに彩るループの源泉となっているのはm-floの“How You Like Me Now?”(2000年)で、そのリサイクル方法のイメージがジェイ・Zの“Izzo (H.O.V.A.)”(2001年)にあるというのはインタヴューで話されている通りだが、一聴して例えばメイスの“Welcome Back”(2003年)なんかを思い出す人も多いはずだ。

m-floの2002年作『EXPO EXPO』収録曲“How You Like Me Now?”

 実際にCREAMの2人とも2000年代初頭のUSアーバンを〈いちばん好きな時代の音楽〉と話していたが、スノビズムの欠片もなく間口の広い楽しさに溢れていた往時のフィーリングは、“Just Like You”などを例に挙げるまでもなく『#nofilter』が根幹に受け継ごうとしている部分じゃないだろうか。

 そんな00年代初頭ノリは、90年代ヒップホップ・ソウルの作法がアシャンティらによって再施行されていた時期でもあり、ビッグ・パンというかタリアの“I Want You”(2003年)などをマーダー・インク的な方法論で用いるアリアナ・グランデの00年代リヴァイヴァルにCREAMがシンパシーを寄せるのも頷ける。他にもダンス路線に転じる前のリアーナっぽさは新作中の“WINNER”に明白だし、00年代初頭の申し子たるシアラが原点回帰した“Body Party”は2人もYouTubeの〈CREAM VISION〉でカヴァーを公開していた(アリアナやニッキ・ミナージュのカヴァーも必見!)。

タリアの2003年作『Thalia』収録曲“I Want You”

シアラの2013年作『Ciara』収録曲“Body Party”

 そう思うとクランク〜ダーティー・サウスの延長線上に生じたトラップの“PARTY CHAKKA-MEN”があるのもごく自然だ。なお、一口に〈EDM〉と括ると受け手の認識度によって誤差が生じそうなダンス・トラックに関しては、いわゆる北米ノリではなく、DJアントワーヌらリゾート感のある欧州ハウス〜ユーロダンスに近い明るさを下地としていることを強調しておこう。

 

▼関連作品

左から、m-floの2001年作『EXPO EXPO』(rhythm zone)、ジェイ・Zの2001年作『The Blueprint』(Roc-A-Fella/Def Jam)、アリアナ・グランデの2013年作『Yours Truly』(Republic)、タリアの2003年作『Thalia』(Virgin)、リアーナの2007年作『Good Girl Gone Bad』(SRP/Def Jam)、シアラの2013年作『Ciara』(Epic)、トラップ大盛りのベース・コンピ『Star Twerk』(Because)、DJアントワーヌの2014年作『Sky’s The Limit 2.0』(Manhattan/LEXINGTON)

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