最初の火花から1年、噂が噂を呼んで騒乱のストーリーを拡散してきた6人が、早くもメジャーに土足で侵攻!!!!!! 更ける世を異常なスピードで駆け抜けていく〈楽器を持たないパンク・バンド〉の命は如何に??????
セントチヒロ・チッチ「品川ステラボールは、いままでで一番大きい会場で想像できなくて緊張したんですけど、当日は〈やってやるしかない〉って。一心不乱でした」
ハシヤスメ・アツコ「初めてのポップアップがあったり、照明やセットの細かいところまでこだわりがたくさん詰まってて、感動や達成感は凄くありましたね。ただ、後から動画を観せてもらったら、自分たちの実力じゃなくていろんな周りの要素で引き上げてもらってる部分が多いと思ったので、まだまだだなと思いました」
アイナ・ジ・エンド「ライヴが終わった当日の夜に〈こんな実力でステラボールに出た人っているのかな〉って真面目に考えたんですよ。自分ではがんばったし、やりきったんですけど、たぶん普通に100%だったんです。でも、それ以上を期待していろいろ舞台を用意していただいていると思うので、自分らも100%じゃなくて、120%、180%って力を出していかなきゃいけないし……いまのBiSHに足りないのはそこかなと思います」
選ばれてあることの恍惚と不安――当人たちの気持ちはそんなところかもしれません。昨年の初ツアー〈Eden of Sorrow Tour〉と今年2月からの〈IDOL SWINDLE TOUR〉を軒並みソールドアウトで完遂し、3月27日のファイナルでは過去最大規模の品川ステラボールを凄まじい熱気で包み込んだばかりのBiSH。そもそも初ライヴから1年経っていないわけで、数段飛ばしで階段を駆け登る速さは異常ですが、本人たちは至って謙虚な様子です。今年に入って新たに〈楽器を持たないパンクバンド〉を標榜し、メジャー・デビューも果たした現状を思えば、先人の足跡を辿ってみせるような段階はもうとっくに過ぎているのかもしれません。
チッチ「メジャーになって緊張感が増しました。特にハグ・ミィはね、もっと気をつけないと」
ハグ・ミィ「〈ちんちん〉とかツイートすると、〈もっと自覚持ちなよ〉ってリプライされたりしますね」
モモコグミカンパニー「ツイートする意味がわかんないんだけど(笑)。メジャーだから、ってことではないんですけど……こなすだけじゃなく、ちゃんと向上していかなきゃダメだなと思うようになりました」
そんな6人のメジャー・デビュー・シングル“DEADMAN”は何と99秒の騒々しいファスト・チューン。歌詞にはBiSの“primal.”を連想させる部分もあり、かの『London Calling』を手掛けたティム・ヤングのマスタリングという〈パンク〉な援護を受けつつ、アイナが激しいシャウトで過激に捲し立て、開放的なフックへ移行したかと思えばアッという間に走り抜ける、人を食ったようなカッコ良さ(MVも)はBiSHならではのものです。
ハグ・ミィ「〈売れたい、モテたい、嵌めたい〉って、誰もが思う人間的な叫びじゃないですか。それを99秒に込めてるのでスッキリします。BiSHの叫びでもあるし、リスナーの皆さんの叫びでもあると思うんですよね」
アイナ「これ、興奮しすぎて最後まで歌えないんですよ(笑)。激しすぎて体力が持たなくなるんで、99秒で良かったです。3分とかやったら気絶してますね、私(笑)」
リンリン「ダンスも頭を振りまくったりハチャメチャな感じで、歌詞にもピストルとかカミソリとかいう言葉があって。聴いてても踊っててもインパクトがあるし、ちょっとヤバい人たちかな?って感じ。けっこういいと思います」
そんなエクストリームな楽曲だけに、ステラボールで初披露された際には、客席が呆気に取られたような印象もありました。
ハグ・ミィ「そうですね。“DEADMAN”は弾丸みたいな曲だと思ってて、すぐに過ぎ去ってしまうけど、そのなかで重いインパクトを残せるというか。呆気に取られたっていうのも、普通の3分ぐらいの曲ならそうはならないじゃないですか。BiSHのやることに馴染んでる人にも印象を残せる、そんな曲になりましたね」
対してもう1曲の“earth”は小室哲哉が作曲を担当した話題のナンバー。惜しげもない〈小室節〉の奔流に、歌詞には往年のヒットへのオマージュも散りばめ、V2ばりの突進するアレンジで興奮をそそりまくる出来映えです。
ハシヤスメ「90年代のJ-Popを紹介する番組とかを観てたら必ず名前が出てくる方ですし、小さい頃から知ってる曲で〈これ小室さんの曲なんだ〉っていうのも多いので。純粋に雲の上の人みたいな……」
ハグ・ミィ「私はカラオケでglobeさんを歌うことも多いんですけど、小室さんの曲って同じフレーズを繰り返すのが印象的で、そこが歌ってて気持ちいいところで。“earth”もそういう構成になってるので、みんな覚えやすいし一緒に歌って楽しめるんじゃないかな」
リンリン「レコーディングをツアーの期間中にやったので、より気分が乗ってて、楽しかったです」
モモコ「ライヴではまだやってないんですけど(*取材時)、いつものBiSHらしい盛り上がりがある曲とは違うので、お客さんはどんな感じになるんだろう?って逆に楽しみですね」
6月からは全国23か所(24公演)を回る〈Less than SEX TOUR〉がスタート。その間にはリヴェンジとなるTIF出演も挿みつつ、10月8日のツアー・ファイナルは〈帝王切開〉と題して日比谷野外音楽堂で行われます。凄まじい勢いで成長していく彼女たちの輝かしいストーリーは、そこでまた新しい転換点を迎えることでしょう。
ハグ・ミィ「BiSH史上いちばん多くの場所を回るツアーで、いままで行けなかった場所もあるから、初めて私たちを観る人も来てくれるツアーになると思うので……とにかくいろんな場所でいろんな人に観てもらいたいですね」
アイナ「いまはまだ状況に必死でついていってるグループだと思うので、野音ではそこの壁を越えたいし、自分でも納得できるものにしたいです」
チッチ「ツアー期間も長いじゃないですか。私たちも成長すると思うし、場所によってお客さんの楽しみ方も違うと思うし、全国各地のパワーをいろいろ吸収して、ずっと出たかった野音に大きくなったBiSHで帰ってきます!」
ちなみにツアー名の〈Less than SEX〉とはどういう意味なんでしょうか。
モモコ「セックスまでは行かないけど、セックスぐらいのイメージでやろうぜ!みたいな感じ(笑)?」
チッチ「前戯みたいな……?」
アイナ「前戯は長めのほうがいいから、ツアーも長いのかな」
モモコ「ファイナルが〈帝王切開〉だからね」
アイナ「産みます」