OPN
あのモダン・アンビエントは一日にして成らず。現在に至るまでの過程を確認せよ!
DJアールの次作に全面関与していることがアナウンスされたり、ジャネット・ジャクソンの“Rhythm Nation”をカヴァーしたり、さらにアントニー・ヘガティがアノーニに改名して初となるニュー・アルバム『Hopelessness』ではサウンドメイクの全般をハドソン・モホークと共に担っていたり、今年に入ってますますわけのわからなさが加速しているワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下:OPN)。このたび彼のカタログ3枚――2011年リリースの5作目『Replica』、2008~2009年にCD-Rなどで発表した楽曲から成る編集盤『Drawn And Quartered』(2013年)、そして初期音源をまとめた『The Fall Into Time』(2013年)――がリイシューされた。いずれも神秘的かつ幽玄なアンビエント・ナンバーが詰まっていて、必聴盤なのは間違いない。多幸感に満ちたシンセ・サウンドや郷愁を誘うメロディーも存分に味わえる。
そのなかで個人的に推薦しておきたいのが、『Drawn And Quartered』だ。リヴァーブやディレイなど、空間を埋め尽くすようにエフェクトがたくさん使われていて、2010年作『Returnal』以降の洗練されたプロダクションと聴き比べたら粗さが目立つのも否めない。だが、現在のOPNサウンドに辿り着くまでの旅路を知れるという意味では貴重な一枚と言えよう。しかもラストでは、心地良いアシッド・フォークという、他の作品では見られないタイプの曲調まで確認できる。6月に〈TAICOCLUB〉で来日することだし、これを機にOPNの音楽遍歴を振り返ってみてはいかがだろうか。