コラム

マイケル・デイヴス、ブルーグラスの伝統と現代のロック血肉化した新世代の重要人物が放つ意欲作『Orchids and Violence』

マイケル・デイヴス、ブルーグラスの伝統と現代のロック血肉化した新世代の重要人物が放つ意欲作『Orchids and Violence』

ブルーグラスの最前線と実験的アレンジによる意欲作

 縁眼鏡をかけた痩身のギターを抱えた男。エルヴィス・コステロか、はたまたアート・リンゼイか、な風貌の彼の名はマイケル・デイヴス。内気な大学生風インテリルックの彼が現代ブルーグラス界の最重要人物、クリス・シーリとの超絶技巧ブルーグラス・デュオ・アルバム『Sleep With One Eye Open』でグラミーのブルーグラス部門にノミネートされたのは2011年のこと。クリスのマンドリンとの絶妙なコンビネーションと類稀なるテクニックでブルーグラス・リスナーの度肝を抜いた彼の単独名義でのリリースを心待ちにしていたファンも多いのではないか。

MICHAEL DAVES Orchids and Violence Nonesuch(2016)

 キックスターターで自ら企画し、2年かけここに実を結んだこのアルバムは、サラ・ジャローズアイム・ウィズ・ハー)やクリス・エルドリッジパンチ・ブラザーズ)含む友人たちとトラッドビル・モンロー・ナンバーなどを演奏するオーセンティックな「BLUEGRASS」サイドと、ギターをエレキに持ち替えベースと1曲バンジョー奏者を迎えた以外すべての楽器が自演の宅録風味溢れる「ELECTRIC」サイドの2枚組。収録曲順まですべて同じこの2つのサイドだが、その音楽性のギャップに驚かされる。圧倒的なスピードで爽快に駆け抜けるブルーグラスとスロウテンポで内へ内へと向かうエレクトリック、特にこのエレクトリック・サイドでブルーグラス・ナンバーがダウナーに歪んでいく感覚はドラッグ・シティ的サイケ・アメリカーナとしてズブズブに耽溺できる。更に再びブルーグラス・サイドを聴いた時、新たに感じるブルーグラスという音楽の豊かさや尖鋭性にこの2枚を交互に聴き続ける楽しみがある。パンチ・ブラザーズのようにブルーグラスの伝統と現代のロックをどちらも同じように血肉化して新たな音楽を作りだす新世代の重要人物としてマイケル・デイヴスはこの作品1枚でもってシーンにその名を刻みつけた。

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