〈やあ、また逢えたね!〉――広い世界の音楽を経験した二人の再会を祝したニューアルバム
タジ・マハールとライ・クーダーの二人はタジ22歳、ライ17歳の時ロスアンゼルスで出会い直ぐに意気投合し、〈ライジング・サンズ〉というバンドを結成。バンドが残したアルバム用録音楽曲は60年代半ば当時のアメリカのポップ・チャートを席捲してたザ・ビートルズの音楽を意識した形跡もありつつ、タジの奔放な歌声、ライがかき鳴らすカラフルなギターやマンドリン演奏からはデルタ・ブルースやブルーグラスやヒルビリーなどのルーツ・ミュージックに対する二人の強い嗜好性が感じられ、そんな二人のポップ・ミュージックの枠組みに収まりきらない強烈な個性が災いしてか〈こんな珍妙な音楽、売れない〉とばかりに所属会社から発売が見送られるという憂き目に遭い、バンドは短期間で解散。解散後二人はそれぞれ単独でアメリカのルーツ・ミュージックを幅広く深く掘り下げながら探求し続け、シンガー、演奏家として研鑽を積み続けながら同時にストーリー・テラーとしての才能にもどんどん磨きをかけ、その音楽探求の旅の途中からはアメリカを飛び出しもっと広い世界の音楽との出会いやそのエッセンス吸収を繰り返しながらオール・アラウンド・ザ・ワールド的な感覚を備えた音楽家へと成長を遂げて来た。不思議な事にバンド解散後に二人は共演を果たす事がなかったけれど、別々に,随分あちこち寄り道、遠回りをしながら音楽の探訪と探求の旅をし続けて来たからこんなにも長くクロスロードで再開を果たすまで時間がかかったのだろう。半世紀の時を越えて届いた二人からの再会の便りのような本作には〈やあ、また逢えたね〉〈さあ、またアレをやろうぜ〉というような和やかさと気楽さが満ちている(アレとは二人を結びつけた共通の音楽的アイドル、サニー・テリー&ブラウニー・マギーの楽曲の事です)。デュオ作品と呼んでもいいけど、実はライの息子ユアヒムがタジとライの掛け合いにニュアンス豊かなリズムで彩りを添えてるとこが本作を一層魅力的な作品としている(孝行息子だね、ほんと)。