1973年、冷戦時代にアイスランドのレイキャビクで行われたチェスの世界王者決定戦は、米ソ間の国の威信をかけた代理戦争として歴史に刻まれている。その戦いを映画『ラスト・サムライ』のエドワード・ズウィック監督が映画化。チェスが遊戯の域を超え、人間の精神を大きく揺るがすという、ある種、兵器のない戦いとしての描かれ方が見事。トビー・マグワイア演じるボビー・フィッシャーのチェスプレイヤーの天才であるが故の苦悩や狂気を主軸としながらも、冷戦時代特有の、いつ何がきっかけで世界大戦が始まるかも知れない緊張感を常に観ている側へ漂わせる演出は監督の手腕あってこそ。