チャオ ベッラ チンクエッティ
10周年も通過点――待望のニュー・アルバムが熱い!!!!

 十年一昔といいますが、かけがえのない日々を駆け抜ける若い女性にとって、10年という単位は大昔になるのかもしれません。このチャオ ベッラ チンクエッティのメンバーたち――(左から)岡田ロビン翔子後藤夕貴橋本愛奈諸塚香奈実も、そんな長い年月をグループでの活動に費やしてきました。

 結成は2006年8月2日。ハロプロエッグから選抜された3名がTHEポッシボーの名を与えられた時から、このグループの活動はスタートしました。その後6人組となってデビュー……以降の足取りは多くの人が知るところかもしれませんが……2016年現在、チャオ ベッラ チンクエッティと改名したグループは4人で奮闘を続けています。

チャオ ベッラ チンクエッティ Alive 4 U!!!! PICCOLO TOWN(2016)

 そんな結成記念日の翌8月3日、彼女たちは2年ぶりの新作にして現体制で初のアルバム『Alive 4 U!!!!』をリリースします。いわゆるアニヴァーサリー的な機会ではありますが、今回のアルバムは感慨よりも現在進行形を強く意識したもの。すでにライヴで機能しまくっている強力なナンバーをズラリと取り揃え、ワンステージのセトリのように配した構成は、これからチャオベラに出会うリスナー/オーディエンスに手招きするような、ライヴの楽しさを約束する内容になっているのです。

 そんな楽曲群は、すなわちファンにとっては長らく音源化を切望していたものでもあります。まず、山寺宏一の陽気な煽り声をループした“True Hearts ~ファンタスチック4~ Ver.A”は、ライヴのオープニングSEと、個々のダンスをラップで盛り上げる他己紹介のパートと、そこからキャッチーに広がるフックの開放感をすべて掛け合わせた定番の一曲。4人それぞれのかっこいい個性が漲る人気のアップ・ナンバーです。また、激情を迸らせてエモーショナルに歌い上げる“ギミバニラ!”もその勢いを受けたダンス・チューン。年齢相応のセクシーな魅力でグイグイ迫ってくる様子は何ともパワフルです。

“True Hearts ~ファンタスチック4~ Ver.A”のライヴ映像

 

 その後には過去最高のセールスを記録した1月のシングルから“一期一会”と“どうしよう、わたし”を立て続けにカマし、KANの日本語詞で〈オー・シャンゼリゼ〉を取り上げた昨年のシングル曲“表参道”と、恩師つんくの作詞した“Never Never Give Up”は、現4人による新ヴァージョンで披露。感傷に溢れたバラード・ナンバーの“二子玉川”は歌姫こと橋本のソロで収められています。

 また、タイトルがポッシボー感(?)の強い完全な新曲“BOOM!×3 ~ジェラしっちゃうぞ! 焦らしっちゃうぞ!~”も大人っぽいシャープさが光る楽曲。4人のかっこいい表情と逞しい歌唱力を思うままにアピールしてくれます。一方で、ポッシボー時代から人気の名曲“さぁ来い!ハピネス!”(2013年)のライヴ録音をベースに新規のコーラスや合いの手を盛り込みまくった“ハイパー!!ハピネス!!(2015.12.27 豊洲PIT Ver.)”は、現場の汗だくなノリをそのまま直送するもの。

 以降もライヴではお馴染みな楽曲の初音源化です。実質的なロビンのソロとなるアッパーな“Pi-Kan§Sweet Emotion!”、そして諸塚のラップが可愛くもエモい鉄板ナンバー“キャモン! ~主役は私だ(お前もな!)~”、中島卓偉のペンによる男らしい雰囲気のポジティヴなロック・チューン“スタート”……と、歌や音楽にこだわって走ってきたメンバーたちの気合いが粒揃いの楽曲から伝わってくるかのよう。

 その流れをシメるのが、冒頭曲のエンディング・ヴァージョンともいえる“True Hearts ~ファンタスチック4~ Ver.B”。ボーナス・トラックには、縁のあるTESSYこと手島いさむユニコーン)がギターで参加したアコースティック仕立ての“GOOD NIGHT SONG”へ……というのがこのライヴ、もといアルバムの概要。以上はロビンと後藤による〈ろびゆき盤〉の流れですが、はしもろコンビ主導による〈TWINS盤〉は曲順がまた異なり、ボートラでは“Dream More Dreams!”を披露していたりします。

 ともかく、数々の挫折を背景にしながらもそれを吹き飛ばす姿を全力で見せてくれるようなエモーショナルなアルバム。あれこれを振り返ったりしない作りの意味は、“True Hearts ~ファンタスチック 4~ Ver.B”で〈人生を振り返るのはまだ先でいい〉と歌っている通りでしょう。4人での活動はまだ1周年を迎えたばかり。節目すら通過点にしてチャオベラの道は続きます。 ※出嶌孝次