〈NYへ行きたいかー!〉というトメさんの掛け声と共に、一定の年齢以上の人であれば、潜在意識の深層に刷り込まれているであろうあのメロディー。実は米ドラマ名作〈スター・トレック〉のテーマソングであることを知ったのは、だいぶ大人になってから。いま考えればバブリーこの上ないかのクイズ番組に、幼なき頃はひたすら憧れを抱いたものだ。
で、何を言いたいのかというと、NYどころかLAやオーストラリア、タイ、韓国、モンゴル……と旅して回ったGAGLEのHUNGERが、各地で出会ったMCらと手合わせした楽曲と彼単独のトラックを収めた初ソロ・アルバム『SUGOROKU』のこと。〈旅〉をテーマにしたコンセプチュアルな同作において、ワールドワイドなコラボ・チューン群へ繋ぐブリッジとなるのが、〈アノ曲〉を敷いた“ウルトラベル”だ。
DJ Mitsu the Beatsがトラックを手掛け、格好良いドラムブレイクとHUNGERのモノローグで始まるという構成からしてアガるこの曲。〈始まる!〉感たっぷりのワクワク感を煽る仕様で、間違いない仕上がりでしょう。
もちろん、コラボ曲もイイ感じで、個人的にはアジアの面々とのナンバーが印象的。特にモンゴルのMCであるBOLDOOとQUIZAとの“One Time In Mongolia”は、モンゴル語のラップを初めて聴いたこともあってかなり衝撃を受けた(とはいえ2008年に7インチでリリースされているのだが)。ドイツ語っぽい聴き心地のそれ、どんなことをラップしているのかが非常に気になるところだ。また、韓国のラッパー・MAKE-1とSEAN2SLOW、シンガーのJINBO※(大好き)との“Wakjazzical”のゴキゲンなビート(こちらもMitsu the Beats製)もかなり良い!
※JINBOは2010年に7インチ・シングル“Tell Me Why”を『SUGOROKU』と同じ松竹梅からリリースしている
また、Monkey_sequence.19による、バリあたりの民族性を感じさせるサイケデリックなトラックが良すぎる冒頭曲“Square 1”と黄昏ムードがたまらないラスト“旅ノ扉”を筆頭に、アルバムのコンセプトを引き締めるHUNGER単独曲の聴き応えが何より素晴らしい。完璧です。