台湾を代表するR&Bシンガー〈9m88(ジョウエムバーバー)〉。彼女は、ジャズやヒップホップを取り入れた都会的なマンドポップサウンドが、台湾の若者を中心に大きな支持を集めている。また、米NYの名門ニュースクール大学ジャズ&コンテンポラリーミュージックでジャズを学んだ実力派であり、2020年に88risingが主催したグローバルコンサート〈ASIA RISING FOREVER〉では、Rich BrianやNIKIといった豪華アクトたちと並び、その歌唱力を世界に示した。

日本との接点も少なからずある。2017年にリリースされた竹内まりやのカバー“Plastic Love”が話題を呼び、2018年には東京・青山の月見ル君想フで来日公演を開催、2019年には〈SUMMER SONIC〉にも出演している。

そんな9m88が2022年8月24日、Pヴァインからセカンドアルバム『9m88 Radio』をリリースした。日本からDJ Mitsu the BeatsとstarRoが参加。その他にもストーンズ・スロウから作品をリリースしているシンガーソングライターのサイラス・ショート(アメリカ)や、BTSやRed VelvetをはじめとするK-Popアイドルへの楽曲提供で知られるプロデューサーのSUMIN(韓国)など、多彩な海外ゲスト陣も魅力。

各国の異能たちを招き、双方向型の自由なコラボレーションによって生み出された楽曲群はこれまでになく大胆かつマチュアな印象を与える。本作で本格的な海外進出を目指す9m88に、その制作プロセスやコンセプト、コロナ禍を経ての心境の変化など、縦横無尽に語ってもらった。

なお、このインタビュー記事は、Taiwan Beatsとのタイアップとなっている。Taiwan Beatsの日本語サイトでも9m88の記事を同時掲載しているので、ぜひチェックしてほしい。

★Taiwan Beatsとのタイアップ記事一覧はこちら

9m88 『9m88 Radio』 Jazz Baby/Pヴァイン(2022)

 

DJ Mitsu the Beats、SUMIN、starRoとの出会い

――今作は日本からstarRoとDJ Mitsu the Beatsが参加していますし、“Plastic Love”のカバーや〈SUMMER SONIC〉出演など、デビューされた頃から日本とも少なからず関わりがありますよね。日本と台湾で違いを感じたりしますか?

「以前、日本でパフォーマンスすることになった時、日本人とどう接するべきかとても迷いました。そして結果的にとても礼儀正しくすることにしたんです。なので、台湾人と接する時とは全く感覚が違いましたね。あと、日本ではいわゆる〈アイドル〉的な存在と見做されていたようにも感じます。それは日本という国が持つ雰囲気によるものだとも思いますし、私を頭から爪先まで全て変えてしまう体験で、とても興味深いものでした。

台湾では多くの人が女性芸能人に対して、〈好かれる存在〉であることを期待しているように思います。けど、私は性格的にそういったことはあまり気にしないので、そことは乖離を感じるんです。自分がやりたいように自己表現することは大切ですし、期待に完璧に応える必要もありません。とはいえ、それも友達や家族、恋人など関係性次第なところもあるので、漠然としていますよね。日本ではそういったスターカルチャーがより誇張されているようにも感じました」

竹内まりや“Plastic Love”のカバー

――DJ Mitsu the Beatsとはどのように知り合ったんですか? そして、最新アルバムに参加している海外アーティストたちとの関係についても教えてください。

「DJ Mitsu the Beatsとは楽曲“九頭身日奈 Nine Head Hinano”(2017年)を通じて知り合いました。この曲では彼の楽曲“Playin’ Again”(2009年)のインストゥルメンタルが使用されています。今回はアルバムのために10のトラックを用意してくれたんです。

『9m88 Radio』収録曲“Tell Me (prod. by Mitsu the Beats)”

SUMINとは共通の知り合いが何人かいたことで知り合いました。この数年、彼女の作品に注目していて、その動向を追っていたんです。彼女の音楽はとてもかっこいいし、ユニークですよね。

starRoとは〈Clockenflap™️〉(香港のアートとミュージックのフェスティバル)のプロモーターを通じて知り合いました。私が彼の音楽をとても気に入っていることを知り、紹介してくれたんです。それで、インスタで友達になりました。レッド・ホット・オーガニゼーションから2020年にリリースされている台湾音楽のコンピレーションEP『T-POP: No Fear in Love』(アジアにおけるLGBTQ+のエンパワーメントをコンセプトとするチャリティー作品)に収録されている“If I Could”はstarRoがリミックスしたもので、とても気に入ってたんです。そこで単刀直入に〈私とコラボレーションしない?〉と誘ったら、快諾してくれました」

2020年のコンピレーションEP『T-POP: No Fear in Love』収録曲“If I Could (starRo Remix)”