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彼のキャリアを辿れば、その時々の流行が見えてくる!

 デヴ・ハインズがシーンに登場したのは2005年。当時のUKはブロック・パーティマキシモ・パークを筆頭に、〈ポスト・パンク・リヴァイヴァル〉人気が沸点に到達した時期です。デヴの在籍したテスト・アイシクルズもその流れで括られていましたが、唯一作『For Screening Purposes Only』はライヴァルたちの音と比べてエレクトロ濃度が異様に濃く、批評家筋から困惑の声も多数。結果、セールス不振に終わるものの、〈ニューレイヴ〉の先駆けとして数年後には再評価を浴びることに。

テスト・アイシクルズの2005年作『For Screening Purposes Only』収録曲“Circle. Square. Triangle”

 しかし、クラクソンズ爆発前夜の2006年に解散。デヴはライトスピード・チャンピオンの名で再出発し、今度は牧歌的な歌世界へ足を踏み入れます。同じ頃にUSではフリート・フォクシーズグリズリー・ベアが台頭。彼らの奏でるトラッド色の強い音響フォークは〈ニュー・フォーク〉と呼ばれ、デヴの周りでもエミー・ザ・グレートフローレンス・ウェルチ(共にライトスピードの準メンバー)が才能を開花させていきました。でもやっぱりひとつの場所に留まれない性分なのか、マムフォード&サンズがUSでもブレイクした2010年に同プロジェクトは終了。NYへ移り、ブラッド・オレンジ名義での曲作りを本格化させます。以降の活躍は本文にもある通り。旺盛な好奇心で音楽業界をサヴァイヴしてきたデヴ。彼の動きを追っていけば、時代ごとの流行が見えてきそうですよ。 *山西絵美

ライトスピード・チャンピオンの2008年作『Falling Off The Lavender Bridge』収録曲“Tell Me What It's Worth”