原点回帰~スナーキー・パピーの全ての始まりだったテキサスから
様々な分野の逸材歌手たちを起用した、2013年(Vol.1)と2016年(Vol.2)リリースの歌もの盤『Family Dinner』の好評。また、オーケストラ・サウンドとの拮抗を求めた2015年作『Sylva』のグラミー賞獲得。一方、自己レーベルの〈グラウンド・アップ〉からは、オルガン奏者のコリー・ヘンリーら周辺奏者のリーダー作もいろいろ送り出す。近年のスナーキー・パピーの活動の充実の様は、本当にすごい。思わず、リーダーのマイケル・リーグに、あなたは見事にエンパイアを築いていますねと問いかけてしまった。
「わぉ! でも、コミュニティと呼ぶようにしようよ。アイデアとしては、グローバルなコミュニティを音楽好きの聴き手と築きたい。アーティストも本物のアーティスト、自分の音楽を作る人を集めるということだ」
音楽教育の質の高さで名高い北テキサス大学の学生仲間で組まれた彼らだが、その快進撃は2010年にテキサスからNYにバンドごと移った事から始まった。
「やはり、音楽発信の中心地はNYだからね。だけど、NYに引っ越すというのは楽にできるものではない。ユダヤ人の結婚式で演奏するという仕事を確保して、みんなで移った。でも、それは正しい決断だったね」
構成員が増えているスナーキー・パピーだが、今もその8割はテキサス組だそう。そんな彼らの新作『Culcha Vulcha』は純バンドによるアルバムとなる。
「関与してきたメンバーたちを一堂にスタジオに集めた。ここのところのアルバムが他者と協調してのものなので、本来の姿に立ち返って作ろうとしたんだ。そしたら、みんながいろんな意見を発するようになっていて、それがすごく豊かな音楽を作っていくことにつながった。それは、10年前と全く変わった部分だね」
新作はわざわざテキサスに出向き、メキシコとの国境近くのスタジオで録音された。
「バンドが集中できるように、周りに何もない所を選んだ。テキサスに戻るというのが、重要だったのだと思う。僕たちの全ての始まりがテキサスだったから」
多彩な音楽的興味と音楽を作る歓びと気の合う仲間が重なることの出来る素敵が交錯しあうインストゥルメンタル盤。リーグはそんな『Culcha Vulcha』を、今のジャズとして作ったのか? それともジャズから離れた音楽を求めようとしたのか。
「僕は、まったくジャズじゃないと思っている。まあジャンル分けなんかどうでもよく、僕たちとしては自分たちの音楽をやっていると思っている」
大学でコントラバスを専攻したリーグのお気に入りベース奏者は、電気がジェイムス・ジェマーソン、アコースティックがレイ・ブラウンとのことだ。