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非モテは人間をやめてロブスターに ~カンヌ映画祭でも話題のシュールな笑い生むディストピアSF映画「ロブスター」

非モテは人間をやめてロブスターに ~カンヌ映画祭でも話題のシュールな笑い生むディストピアSF映画「ロブスター」

非モテは人間やめて動物にでもなってくださいという世界の映画です!

 主人公が、生まれ変わるならロブスターになりたいという映画である。ロブスターは120才くらいまで生きるから長生きして静かに暮らしたい、と。

 私はロブスターになりたい。

 といっても、これは戦争中にアメリカ兵を殺して死刑に処される主人公を描いた反戦映画ではない。ディストピアSFである。どうディストピアなのか。それは、恋愛パートナーがいない人間は、世の中に必要がないと見做され、動物に変えられてしまう世界なのだ。ただ、変えられてしまう動物の選択だけは、本人の意思を尊重してくれるのである。

ヨルゴス・ランティモス,コリン・ファレル ロブスター ファインフィルムズ(2016)

 主人公は、あるホテルを訪れる。そのホテルは矯正施設で45日間以内に恋愛パートナーを見つけ出さなければいけない。婚活バトルロワイヤルな様相を呈する中で、ある者は成就し、ある者は自死を選び、多くの者は動物に変えられていくだろう。

 主人公は、ロブスターになる前に逃走し、森に逃げ込む。その森にはパートナーなんて必要がないというレジスタンスたちがいた。助かった、という思いも束の間、“恋愛禁止”のレジスタンスにパートナーを見つけてしまうという悲劇が訪れる。

 極度に戯画化された世界はシュールな笑いを生む。無論、これは近未来ではなく現代のお話だ。あまりに類型的ではないか? とも思わせるが、類型化の凡庸ささえも笑いに昇華させる監督ヨルゴス・ランティモスの手腕は逞しい。中でも、レジスタンスたちが夜の森に集まり各々自身の好きな音楽をヘッドフォン聴いて踊る無音のシーンには可笑しみとともに“詩情”さえ漂うこの映画の白眉といっていい名シーンだ。

 このギリシア監督の小品に、コリン・ファレルレイチェル・ワイズレア・セドゥベン・ウィショーら豪華な役者陣が集結したのも頷ける怪作。カンヌ映画祭の審査員だけでなく(審査員賞受賞)、ブライアン・デ・パルマも最近のお気に入りらしい!  必見!

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