SANABAGUN.の各メンバーのルーツやターニング・ポイントになったアーティストの作品を紹介してもらう本連載。前回の櫻打泰平(キーボード)回で、約1年ぶりにメンバーに再会&連載再開を果たし、残すは3人のみ。ファイナル・カウントダウンが始まりましたよ! ということで、第6回に登場するのはトランペットの髙橋紘一。サナバでは淡々とクールなプレイで魅せる彼が、どんな作品を紹介してくれるのでしょうか? 今回も高岩遼(ヴォーカル)&岩間俊樹(MC)の両フロントマンを進行役に迎えた面白動画がメインのコンテンツではありますが、掲載している動画の発言の書き起こし、言及されている楽曲や補足情報などもまとめたテキストも、ぜひお役立てください。
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【前編】
高岩遼「本日のゲストはトランペットの髙橋紘一です!」
一同「パチパチパチパチ」
高岩「Mikiki(のサナバ連載)は観てくれてたの?」
髙橋紘一「観てない」
高岩「いや、観ろよ」
髙橋「じゃあ観るよ」
高岩「とか言ってね、全部観てますから、彼」
髙橋「噂で聞いてるよ、遼が仕切って、岩間くんがずっとお酒を呑んだくれてるっていうのは」
高岩「なんでMikikiが1年間ブランクが空いたかというと、(岩間が)レッドカードもらっちゃったの、Mikikiさんに」
髙橋「怒られちゃったんだ」
高岩「怒られちゃったの」
髙橋「収録現場は相当荒れてたって聞いたよ」
高岩「荒れてた荒れてた、もうすごかったよ。それで反省して、お酒はもう呑まないようにしたの」
髙橋「じゃあ今日は真面目な感じでやるんだ」
高岩「真面目な感じでやるの?」
岩間俊樹「じゃあ紹介しようよ、CD」
高岩「今日は何持ってきたの、紘一くんは」
髙橋「グールーで、『Jazzmatazz』。なんか名盤すぎてごめんなさいって感じですけど。知ってる? 最近のサナバのファンの人は若い女の人も多いから、知らないかなと思って。入門編にいいかなと持ってきました」
高岩「いいね、いいね」
髙橋「SANABAGUN.は〈ジャズ・ヒップホップ・バンド〉と言われていますが、彼はその源流というか。90年代にヒップホップ・サイドからジャズを採り入れたという感じかな。参加しているメンバーも豪華で、すごくいいんだよね」
高岩「すごくいいよね」
髙橋「とりあえず聴きますか。僕のオススメは2曲目(“Loungin’”)かな」
高岩「俺たちはどちらかと言えばジャズ畑の人間だと思うんだけど、ジャズ畑の人がヒップホップのアーティストをフィーチャーするのはちょっと前からあったカルチャーじゃん、でもこれに関してはヒップホップ・サイドの人がジャズマンにアプローチしたってことが画期的だよね。まあ黒人だから、そもそもジャズやブルース・マインドは持っていたとは思うけど」
髙橋「そうだね。俺がなんでこの曲を選んだかというと、ドナルド・バードというトランペッターが参加しているからです。この人が、当時ジャズとヒップホップをクロスオーヴァーすることにおいてのキーマン。もともとドナルド・バードはビバップのシーンから出てきて、『Black Byrd』(73年)という革新的なアルバムを出したんですが、それが(後年にナズやパブリック・エナミーらがサンプリングしたことで)ヒップホップとの懸け橋になったわけです。俺、ドナルド・バードがすげえ好きで」
高岩「バーダーだ、バーダー」
髙橋「そう、バーダーだね。この“Lougin’”は確かピアノもドナルド・バードが弾いてるんだよね」
高岩「フーン」
髙橋「高2くらいの頃かな、俺、吹奏楽部でトランペットをやっていて、〈ジャズってカッコイイらしいよ〉みたいなさ。で、マイルス(・デイヴィス)とか聴くじゃない、でヒップホップも好きで。それから〈ジャズとヒップホップが合わさってる音楽があるらしいよ〉と。それでこれを知ったんだよね」
高岩「俺ね、この〈Jazzmatazz Vol.1〉はiTunesで聴いたんだけど、盤は〈Vol.2〉(95年)しか持ってないんだよね」
髙橋「このシリーズは〈Vol.4〉まであるんだよね」
高岩「そうそうそう。〈Vol.2〉がね……なんかよくわからないんだよね」
髙橋「2ね、わかるわかる」
高岩「哲学的に攻めてる感じがして」
髙橋「すげえわかる、〈Vol.1〉のほうがわかりやすいよね。だから〈ジャズ・ヒップホップってどういうやつなんですか?〉という人に聴いてもらいたいな」
高岩「確かにね。でもこれはジャズの曲をサンプリングしたりはしてないんだよね」
髙橋「そう、してないの。全部オリジナルなのがいいよね」
高岩「全部オリジナルで、それをジャズのスタンダードにしようとしていた感がある。それがなんかいいよね」
髙橋「あと、このジャケットもいいの。タバコ吸ってんのかな、どうなのか……みたいな感じが。(このジャケ・デザインのモチーフは)ジャズが好きな人ならわかると思うけど」
高岩「ジャズのやつだもんね、まさに」
髙橋「某ブルー・ノートでしょ(笑)」
高岩「某じゃない、言っちゃってる(笑)」
髙橋「グラスパーが好きな人がいまいっぱいいると思うので、その源流もぜひ知ってもらえると、より楽しめるんじゃないかな」