インタビュー

吉澤嘉代子 『変身少女』

恋する女子の気持ちがギュッと詰まった、記念すべきメジャー・デビュー作

吉澤嘉代子 『変身少女』

 少女と大人、妄想と現実。2つの世界の間を音楽という箒に乗って往き来するキュートな魔女、吉澤嘉代子。昨年リリースした『魔女図鑑』で注目を集めた彼女が、メジャー・デビューを飾ることになった。その記念すべき新作ミニ・アルバム『変身少女』には、恋する女子の気持ちがギュッと詰まっている。

 「『魔女図鑑』はとにかく自分の好きなことをやった作品だったんですけど、今回はこれまで書いた曲のなかからラヴリーな曲を集めて、〈ラヴリー・ポップ〉なアルバムにしようと思ったんです。でも、そういう方向性を選ぶにあたっては、覚悟を決めなくちゃいけないところがありましたね」。

吉澤嘉代子 変身少女 クラウン(2014)

 実はラヴソングを書くのが苦手だったという彼女。でも、ファンとの交流が曲に向かう気持ちを変えた。

  「前作を聴いてくださった人たちのなかで、いちばん反響があったのが“未成年の主張”っていうシンプルなラヴソングだったんです。同年代の女の子たちが〈すごくキュンとしました!〉って言ってくれるのを聞いてすごく嬉しくなって。自分のこだわりなんて捨てて、聴いてくれる人たちが喜んでくれるような曲を書こう、と思うようになったんです」。

 そんな気持ちの変化が、新作にはしっかりと反映されている。「前だったら、こんなアホな曲を書かなかった(笑)」という“チョベリグ”は、〈大好きなあの子〉に会ったら側転したくなるほど嬉しいという無邪気なナンバー。いちばん最近書いた曲だという“ラブラブ”で〈ラブラブラブラブ……〉と繰り返すサビのフレーズは、まるで恋の呪文のようだ。そうした〈恋する乙女心〉を、オールディーズ風にアレンジしたのが吉澤流の〈ラヴリー・ポップ〉なのだ。

  「今回の作品は大瀧詠一さんとかフィル・スペクターとか、60年代ブリル・ビルディング・ポップへのオマージュが満載なんです。山下達郎さんのコンサートで多重録音されたサウンドを聴いて〈カッコイイ!〉と思って、“涙のイヤリング”でコーラスを多重録音してみたりもして、すごく楽しいレコーディングでした」。

 そして、時にコミカルに、チャーミングに、「曲のヒロインになりきって」表情豊かに歌うヴォーカルも彼女の魅力。子供の頃から想像の世界で遊ぶのが好きで、ずっと魔女になることに憧れていたという彼女にとって、歌を通じて自分ではない誰かに変身することは素敵な魔術なのだ。なかでも、〈美少女になりたい!〉とストレートな変身願望を歌った“美少女”は、福岡晃子チャットモンチー)、田渕ひさ子bloodthirsty butchers)、あらきゆうこなど多彩な女性ミュージシャンをゲストに迎えて、華やかなウォール・オブ・サウンドを炸裂させる。

  「誕生日に誰も祝ってくれなかった時があるんです。誰かに祝ってもらっているだろうとみんな思ってたみたいで、家に帰ったら誰もいなくて……。それで〈こんな時は自分磨きだ!〉と思って近所の土手を走っているうちに、〈私が美少女だったら祝ってもらえたのに〉と心がねじ曲がってきて(笑)、この曲が生まれたんです。だから結果的には祝ってもらえなくて良かったのかも。この曲で〈恋がしたい〉と歌っているのは、自分が夢中になれるものに出会いたいという意味もあって、〈美少女になりたい〉というのは、理想の自分になりたいということでもあるんですよね。だからラヴソングだけど、それだけじゃないというか。そういうところも気に入っていて、今回のアルバムにどうしても入れたかった曲なんです」。

 〈夢中になれるもの=音楽〉に出会って、どんどん〈美少女〉になっていく吉澤嘉代子。その魅惑の変身ぶりをとくとご覧あれ。         

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