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ひとりぼっちの少年にやさしく寄り添う音楽が印象的なブラジル発長編アニメーション

 この作品のサウンド・トラック盤を探した人は少なくないでしょう? そんな方に朗報です。DVD/Blu-rayが発売されます。この作品の絵と音楽を切り離すなんてナンセンス! 何度再生しても、絵と音が新たな発見と驚きを届けてくれます。

アレ・アブレウ 父を探して VAP(2017)

 さて、本作品の音楽の演奏に参加したのは、ボディ・パーカッション・グループ〈バルバトゥーキス〉、廃材などを使った創作打楽器集団〈グルーポ・エキスペリメンタル・ヂ・ムジカ(GEM)〉、そして今年3月、天に召されたパーカッショニスト、ナナ・ヴァスコンセロス。 イントロは、ナナの音楽のトレードマークとも言える低音ボイスとビリンバウをこする音、そして、物語を導くフルートの音色に乗って、一つの点が、万華鏡のように色鮮やかな幾何学模様となって無限に広がり、始まります。

 物語は、一人の少年が出稼ぎに出て帰らぬ父を探して、未知なる旅に出かけるというもの。少年を取り巻く世界は、クレヨンや色鉛筆、絵具で描かれた絵に、切り絵、実写映像などが有機的にコラージュされて描かれています。物語が進むにつれ、小さなモチーフの欠片にさえ、ブラジルの歴史、社会、文化を示す重要な役割があり、痛烈な社会的メッセージに気付かされます。中でも印象的だったのは、自由の象徴として描かれた色鮮やかなフェニックスが、軍事政権を象徴する真っ黒なコンドルとの戦いに敗れ、天から墜ちていく姿。そのフェニックスの体からは、楽器や音霊が血のように流れ出ていきます。このシーンを見て、実際にブラジルの軍政時代、亡命を余儀なくされた音楽家達を思い出しました。

 少年や列車が疾走する音、雨の音、プランテーション農園で綿花を摘み取る音、軍隊の行進。人力で奏でられる音が、人力で描かれる映像に息吹を与えます。

エンディング・ソングは、ブラジルを代表するラッパーのエミシーダによる《子どもの目に映るのは(少年と世界)》。一切台詞の出てこなかったこの作品の心を最後に語っています。