ECM第2弾は豪華メンバーによるクインテット作品
オーストリア出身のギタリスト、ウォルフガング・ムースピールのECM第2弾。バークリー音楽大学を卒業した彼は、ニューヨークを拠点に様々なジャンルにアプローチし新しい音楽を模索してきた。そして2014年にドラムのブライアン・ブレイドとベースのラリー・グレナディアでトリオ形態となりECMデビューを果たす。
今作では、前作の2人に加えてピアニストのブラッド・メルドーとセロニアス・モンク・コンペティションで優勝経験のあるトランペッター、アンブローズ・マキンムシーレを迎え、クインテット編成となっている。ストレイトアヘッド・ジャズとは異なる作品というコンセプトもあり、複雑なビートで演奏される楽曲が多い。そのため探究心をそそられ、繰り返し聴き込みたくなる。また、トランペットがシャウトにも近い、異質にも感じられる音色を奏でることで、楽曲に豊かなテンションを与えてくれる。
アルバムタイトルでもある《ライジング・グレース》では5人の上品で洗練された演奏の掛け合いが魅了する。《インテンシヴ・ケア》では、ラテン調を含みつつも不穏な響きが印象的で、不可視の恐怖に近いものが好奇心を煽る。それに対し、《トライアド・リング》では爽やかなリフから始まる明るいナンバー。その中にも時折感じる陰のような響きに興味を惹かれる。
《ファザー・アンド・サン》は後半のサスティーンが強いトランペットの音色に哀愁を感じ、《ウォルフガング・ワルツ》では、複雑でありながらも印象的なメ ロディに、おもわず口ずさみたくなる。反対に《ブーガルー》では、スウィングするようなリズムに不安定なメロディがのることでグルーヴ感が際立ち、身体が自ずと動いてしまう。《デン・ホイーラー、デン・ケニー》はメロウであり肩の力をふと抜いてくれるような楽曲。
全楽曲がそれぞれ特徴的要素を持っている為、一概に表現の出来ない前衛的作品となっている。