多くのロック・リスナーを虜にしてきたライヴ・イヴェント〈Hostess Club Weekender〉の第12回が2月25日(土)、26日(日)に東京・新木場STUDIO COASTで開催される。今回のラインナップは、25日にピクシーズMONOガール・バンドピューマローザ、26日にキルズリトル・バーリーレモン・ツイッグスコミュニオンズを揃えた計8組。Mikikiではもはや恒例となった〈HCW〉総力特集を今回もお届けする。25日のアクトを紹介した第1回に続き、この第2回は26日に出演する4組をフィーチャー。Mikiki編集部の小熊俊哉と田中亮太が、各出演アクトの魅力や注目ポイントをカジュアルに解説してみた。

★公演詳細はこちら
★第1回:ピクシーズやMONO、ガール・バンド、ピューマローザ出演の初日を徹底解説

小熊俊哉「初日から濃厚だし、2日目は大丈夫かな……そんなにテンション保てるのかな……と言いたくなるけど、これがまた凄いんだ。ということで、引き続きバリバリ語っていくぞ!」

田中亮太「あんたのテンションのほうが心配だよ」

 

コミュニオンズ

小熊「いきなり妄想からスタートするけど、僕がいま洋楽雑誌の編集長を任されたら、2月号の表紙アーティストは間違いなくコミュニオンズを起用するね。彼らにはそれくらいのポテンシャルがあると思う。田中くんもだいぶ前から〈コミュニオンズがヤバイ!〉と盛り上がっていたよね」

田中「確かにいまではすっかり〈コミュ厨〉と化している僕だけど、アイスエイジで一躍脚光を浴びたデンマークはコペンハーゲン・シーンの新世代として2014年頃に登場した当初は、こんなに凄いバンドだなんてまったく思わなかったんだ。その当時よく使われていた〈リバティーンズ×ストーン・ローゼズ〉という惹句にもとんと興味が湧かず、〈若い人たちが夢中になっておるな~〉なんて斜に構えていたくらいでさ。でも、2016年のシングル“Don't Hold Anything Back”には完全降伏するしかなかったよ。マッドチェスターの要素を湛えつつも、ド直球で胸に飛び込んでくる圧倒的な〈歌の力〉にまいっちんぐしちゃった」 

小熊「これこれ!って感じだよね。コペンハーゲン・シーンは、レーベルで言えばポッシュ・アイソレーションや、その界隈のバンドをたくさんリリースしているUSのセイクリッド・ボーンズ周辺がいまおもしろくて、日本でも一部のリスナーから熱狂的な支持を得ていることは知っていたけど、ちょっとアンダーグラウンドすぎる印象もあってさ。実験的なバンドが多いし、それはそれで大好物なんだけど、やや敷居が高いようにも感じていたわけ。でもコミュニオンズは全然そうじゃない。大袈裟かもしれないけど、次のオアシスになり得るバンドだと思う。僕は正直、オアシスへの思い入れはそんなにないけど、最近ここまでスケール感のあるバンドはいなかったし、さすがに寂しいところもあったから、大型新人の台頭は頼もしい限りだよ」

田中「昨年オアシスのドキュメンタリー映画『オアシス:スーパーソニック』も公開されたし、(特に初期の)オアシス再評価という機運はいま確実にあると思うんだ。コミュニオンズの初作『Blue』について、聴いた誰もが認めざるを得ないのは尋常じゃないメロディーの存在感。インタヴューでも〈自分たちの最大の武器はストロング・メロディー〉と語っているし、本当に久方ぶりの小細工なしでアンセムを生み出せるバンドの登場さ。マーティン・レノフの粘りけのある歌声も、リアム・ギャラガ―を彷彿とさせるし」

2017年作『Blue』収録曲“Come On, I’m Waiting”
 

小熊「この曲はギター・ポップの甘さも採り入れた最近のパンク、日本で言えばKiliKiliVillaの所属バンドやHelsinki Lambda Clubあたりが好きなリスナーにとってもストライクど真ん中じゃないかな。それにコミュニオンズは、コペンハーゲン発らしいシリアスな佇まいも格好良いし、新しいロックスター像を確立してもらいたいね。アー写の面構えも良いじゃない」

田中「いかにも北欧美顔というか、色白で端正なルックスなんだけど、服装のセンスとかは妙に野暮ったいんだよね」

小熊「そういう世の中への怒りが内面にくすぶっていそうな感じも含めて、信頼できる奴らって感じがするよ。あとはライヴだね。〈HCW〉の晴れ舞台は、彼らが本物かどうかを確かめる絶好のチャンスだと思う。ちなみに、最近のライヴはこんな感じらしい」

2017年のライヴ映像
 

田中「このライヴでも、ドラマーのフレデリック(・リンド・ケッペン)が着ているのはアディダスのジャージだし(4分16秒頃をチェック!)、ちょっとDQN感を漂わせているところも含めて、やっぱり2010年代のオアシスになり得る存在だと思う。とにかくこの初来日は必見でしょう!!」

 

レモン・ツイッグス

小熊「今回の〈HCW〉でいちばん楽しみなのはレモン・ツイッグス!という人も実は多そうだね。僕にとっても、彼らのデビュー作『Do Hollywood』はデヴィッド・ボウイ『★』と並ぶ、昨年のベスト・アルバムだったな。このバンドについては以前、詳細なコラム記事も掲載しているので、改めてそちらを参照してほしいね。で、田中くんは彼らのどんなところが好き?」

田中ブライアンマイケルというダダリオ兄弟の10代という若さや奇抜なファッションから、アイコンとしてのキャッチーさについて言及されることが多い気がするけれど、なんだかんだで最大の魅力は曲の良さだと思うんだ。AOR的な洗練ともフォークの持つ滋味とも異なった、トッド・ラングレンXTCを彷彿とさせる狂ったポップソングを2016年〜2017年仕様にアップデートした功績はデカイと思うよ。しかもマニアの慰みものとしてではなく、本来の意味で〈ポップ〉に開けたものとして提示したわけで」

2016年作『Do Hollywood』収録曲“These Words”
 

小熊「なるほど。僕はこの曲のビデオ、ダダリオ兄弟の本質を上手く表していて絶品だなーと思うんだ。いつの少女漫画だよ! 王子様かよ!! 〈ボヘミアン・ラプソディ〉かよ!!!みたいな華やかな衣装を着て決闘ごっこなんかしている序盤のあとで、必見なのが2分35秒あたり。彼らはファンタジーの世界を抜け出して、高架橋の上を歩いて街に繰り出すんだよね。中世ヨーロッパ的なイメージなのかと思ったら、車はビュンビュン走ってるし、弟は風呂に入るし、なんなんだよって(笑)」

田中「このビデオでの出で立ちやサウンド面でのバロック的な志向性は、小熊くんも最近話している〈プレモダンへの回帰〉の一種でもあるんじゃない? 2010年代の傾向として、近代以降に築き上げられていったヨーロッパ的美徳の衰退があり、それがいっそう可視化されたのが2016年だったと思うんだ。その点でも、レモン・ツイッグスや彼らのプロデューサーを務めたジョナサン・ラドー率いるフォクシジェンが、近世のエッセンスを音楽に採り込んでいるのは興味深い」

小熊「先日リリースされたばかりのフォクシジェンの新作『Hang』にはなんと35人編成のオーケストラが全編参加していて、プロデューサーの候補にはヴァン・ダイク・パークスも挙がっていたらしい。で、その新作にレモン・ツイッグスの2人も参加しているんだよね。フォクシジェンはもともとぶブッ飛んだバンドだったけど、自分たちの思想に付いて来られる若い才能を見つけたこともあって、さらに思い切った方向に舵を切っている。『Hang』もマジで傑作だよ」

レモン・ツイッグスがコーラスで参加したフォクシジェンの2017年作『Hang』収録曲“Avalon”
 

田中「この曲、良いよねー。麗しいストリングスや華やかなホーンがふんだんに使われたゴージャスなサウンドにウキウキしちゃう。サム・フランスの野太い歌声とレモン・ツイッグスの2人の少年っぽさを残したコーラスとのマッチングもバッチリでさ」

小熊「レモン・ツイッグスに話を戻すと、『Do Hollywood』を80年代の邦題っぽく訳すと〈ハリウッドしようぜ!!〉となるけど。そういうセンスにこそロックの本質が詰まっていると思うんだ。曲自体の精度は恐ろしく高いけど、俺たちの世界観はハッタリなんだ、ツッコミどころ満載なんだって、この若さで言い切れるギャグセンスと度胸。これは凄いよ、ここ数年そんな人いなかったもん。それが顕著なのは、弟のマイケルがドラムを叩くときの過剰すぎるスティック回し。ドカドカ叩きまくるスタイルはザ・フーキース・ムーンがよく引き合いに出されるけど、本質的にはLa'cryma ChristiLEVINのほうが近いと思う」

田中「あと次のライヴ動画を観ると、ロックを徹底的にカリカチュアライズすることで、蘇生させているようにも思えるな。マイケルの2分50秒頃からのジャンプからキックのアクション、それを経てのエモすぎるシャウトとか、笑えるけれど無性にカッコイイもの」

小熊「やっぱりロック・ギタリストは、沢村栄治や星飛雄馬ばりに足を高く上げてナンボだよ。レモン・ツイッグスの参照元の1つにグラム・ロックは確実にあるし、ほかにも顕微鏡レヴェルで過去のポップスを細かく引用しまくっているけど、彼らはガリ勉タイプというよりは、何かの間違いで生まれたバグのようにも映る。ロック・ヒストリーの並行宇宙からやってきたもう1つの可能性、実際には存在するはずのない過去からやってきた未来的すぎるバンドみたいな。しかも、それがいまの時代に妙にしっくりくるという」

田中「ホントに不思議だよ。それにしても、Pitchforkはどうしてレモン・ツイッグスをガン無視しているんだろう」

小熊「そうなんだよね、思い切りインディー名門の4ADから出ているのに。そういうところに時代の趨勢を感じるというか。まあ、もともとPitchforkは良くも悪くもお上品なところがあるから、お口に合わなかったのかもしれない。ちなみに僕の友人が、次に紹介する動画のパフォーマンスを現地で観てきたんだけど、凄く良かったそうだよ。幼馴染がバンド・メンバーだから一体感があるし、勢いだけの演奏じゃなくて、実は結構テクニカルだと言ってたな」

田中「そうそう、メンバーは幼馴染みとブライアンの彼女なんだよね」

小熊「あとは、若いだけでは出せないロックスター的な〈華〉もあったそうな。お客を煽る感じとかも含めて(笑)」

田中「〈HCW〉のライヴでは、彼らの煽りに大盛り上がりで応えていきたいよね!」

2016年のライヴ映像