インタビュー

井戸から飛び出たMONO NO AWAREの行く先は? 飄々と〈ここではないどこか〉めざした初作『人生、山おり谷おり』を語る

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エスケーピズムへの憧れが曲に散りばめられている

――では、具体的な曲について聞いてみると、先行シングルとして発表されたダンス・ナンバー“イワンコッチャナイ”はもともとどんなアイデアから生まれた曲なのでしょうか?

玉置「これは……何だっけ?」

加藤「酔っ払ってよく〈イワンコッチャナ~イ!〉って歌ってたよね?」

玉置「そうだ! 先輩がヴァージンズの“Rich Girl”をコピーしていて、それが格好良かったんで、あの曲をよく歌ってたんです。で、そのとき作っていた曲にメロディーを合わせて歌ってみたら、めっちゃハマったんですよ」

“イワンコッチャナイ”を演奏する、〈りんご音楽祭2016〉でのライヴ映像 
ヴァージンズの2008年作『The Virgins』収録曲“Rich Girls”
 

――最初から〈イワンコッチャナイ〉って歌ってたの?

玉置「そうですね。英語がわかんないんで、“Rich Girls”もそう歌っているように聴こえたんです(笑)。もともとAメロの〈君に嫌われたらどうしよう〉という部分があったので、そこに〈イワンコッチャナイ〉というフレーズが入ってきて、浮気性というか、目移りしちゃう人の話になって、だからシングルのジャケットもアダルトなイメージにしました」

“イワンコッチャナイ”のジャケット画像
 

――一方で、“me to me”はスケール感のあるサイケデリックな曲調ですね。

玉置アウトフィットってバンドをYouTubeでたまたま見つけて、そのビート感がめちゃめちゃ良かったんでんで、4つ打ちとベースのリズムを基本に作りました。コードに関しては、友達にDADGADを教えてもらったんですけど、自分だと上手くできなくて、変なチューニングのまま弾いているんで、それがサイケっぽいというか、不思議な雰囲気になったのかな」

※チューニング方法の1つ

柳澤「最初に送られてきたデモのイントロは、人力じゃ叩けないような感じだったんですけど、自分なりにパターンを考えました。あとBメロとDメロはその頃にNujabesとか、チルアウト系にハマってたので、そこだけテンポをハーフにしていて、落ちてるんだけど熱いという、そういうニュアンスを試してみた感じですね」

アウトフィットの2013年作『Performance』収録曲“Thank God I Was Dreaming”
 

――“me to me”の歌詞はSNSが題材になっていると思うんですけど、歌詞は基本的に言葉遊びのおもしろさがありつつ、それこそ日常の中で感じるMONO NO AWAREな瞬間や光景を切り取っているのでしょうか?

玉置「その感じはありますね。何とも言えない風景、一言では言い表せない状況を歌詞にしたくて、その意味でも〈MONO NO AWARE〉というバンド名がピッタリだったんです。“イワンコッチャナイ”とかにしても、振られて悲しいみたいな曲はこの世に溢れているから、ストレートに書いてもつまんないなというのがあって、基本的にギャグというか、ちょっとニヤッとするくらいが良い。でも、がんばって読めば、〈こういうことを言ってるのか!〉とわかるような歌詞をめざしています」

――“井戸育ち”に関しては、〈井の中の蛙大海を知らず〉がモチーフですよね。

玉置「自分と成順は島からこっちに出てきたし、武田と豊も田舎から東京に出てきているんで、10代後半に〈知らない世界があるんだ〉ってことを身を持って実感したんですよね。で、数年前に〈東京童貞を捨てたから、今度は海外童貞を捨てよう〉と島の面子で海外旅行をして、ミュージック・ビデオはそのときに撮った映像なんです。当時デス・キャブ・フォー・キューティの“You Are Tourist”が好きで、あの曲は〈生まれ育った街で生きることに心苦しさを感じたら、その街を出るときだ〉という歌詞なんですけど、それがすごく良いなと思って、あの曲のイントロをギター・ソロに入れてみました」

デス・キャブ・フォー・キューティの2011年作『Codes And Keys』収録曲“You Are A Tourist”
 

――〈外の世界に出る〉というテーマは、CDデビューするバンドの状況とも重なるし、さらに言えば、ラストの“駆け落ち”も〈ここではないどこか〉が歌われていて、サイケデリックにはつきものの〈エスケーピズム〉というテーマ性も浮かぶように思います。

玉置「〈外へ行こう〉〈新しい世界に行こう〉みたいな願望は、このアルバムに入ってない曲にも結構入っていて、そういうテーマについて考えるのが好きなんだと思います。僕はビートニクも好きなので、制約がある社会への反抗とか、日本では実現できない社会への憧れとか、そういう想いが曲に散りばめられているんじゃないかな」

――そこって八丈島の出身であることが関係していると思いますか?

加藤「あると思います。自分は島を出て最初に住んだのは群馬でしたけど、東京はうるさいし、窮屈だなと思いました。あと、こっちには何でもあるけど、島には何もなかったので、周啓は昔から自分で絵を描いたり、映画を撮ったりしていました。彼は何もないのであれば自分で作るという人だから、作曲をしているんだと思います。逆に自分はそういうタイプではなくて、プロアクションリプレイでゲームの改造とかしてたんですけど」

※コンピューター・ゲームの改造ツール

――でも、そこはギターに対する研究心という話と繋がりそうですね。

玉置「そう、成順は段々オタクっぽくなったんですよ(笑)。高校の頃は夜中ずっとアニメを観て、授業中は寝ているみたいな感じだったし、一つのことに対して凄くストイックに追究できるタイプ」

――感覚的な玉置くんと、研究家肌の加藤くんっていう、このコンビのバランスが凄く良いんでしょうね。

柳澤「確かに、この2人はセットという感じがする。曲作りも、周啓が全体像を作って、成順がアンサンブルを洗練させていくみたいな」

竹田「成順は耳がいいもんね」

玉置「そう、エンジニアの人がビビるくらい耳がいいんですよ」

柳澤「だから、周啓のイメージを実際に具現化するのが成順というかね」

玉置「たまに奇跡的に、〈そう、その音!〉って、イメージ通りの音を出してくれたりするんですよ。もちろん、それは竹田や豊にしてもそうなんですけど」

――玉置くんが自由に作ったデモを、加藤くんが整えて、最終的に4人で構築していく。それがMONO NO AWAREの色になっているんでしょうね。

玉置「ホント、このメンバーには感謝してます。このメンバーじゃなかったら、MONO NO AWAREはなかったと思いますね」

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