メンバー同士のちょっとした会話から新解釈のアレンジが生まれる
――UKさんとアフロさんは高校の頃から一緒なんですよね。長い時間を共にしてきたからこそ、お2人には共有できるものがたくさんあるんだろうなと思いました。一方のthe band apartも、メンバー全員が学生時代からの付き合いなんですよね。
木暮「そうですね。最近はケンカもしないですから(笑)」
――ハハハ(笑)。前はしてたんですか。
木暮「してた時期もありましたよ。20代後半から30代前半くらいは、よく〈俺、これは弾きたくないわ〉みたいなことを言われてたし(笑)。でも、今はそういうプレイヤーとしてのエゴみたいなものがなくなってきて、おもしろければなんでもやろうという感じだし、〈これはダサいよね〉みたいな感覚も、きっとリアルタイムで一緒に更新されていったんでしょうね。そのおかげで最近はすごくスムースです。MOROHAの曲はいつもどうやって作ってるの?」
UK「まずテーマを決めるところから始まりますね。といっても、だいたいはフツーの世間話なんですけど。そこである程度のテーマが定まったら、アフロがそれについてのリリックを書いて、僕もフレーズを考えていくという」
――テーマに沿ったフレーズを考えるってこと?
UK「そうですね。たとえば、ハッピーな恋の歌なら優しくとか、失恋の歌なら悲しい感じでとか、まずはそういう大雑把なイメージで考えていって、それを2人が揃ったときに合わせるんです。僕は作ってきたループをひたすら弾いて、アフロはそこでフロウを仕上げていくという」
――なるほど。まずはテーマを共有するところから始まるわけだ。
UK「そうですね。アフロは日頃思ったことを常に書き留めているので、彼が〈どうしてもこれを歌いたい〉という気持ちになったときに、まずはそれがリリックになるんです。で、それを僕がちゃんと共有できたら曲になる」
――ときには共有できないこともあるんですか。
UK「1回だけありました。先輩に向けた曲というのがあって。それは人生の先輩だとか、そういう広いテーマの話だったんですけど、僕はその気持ちが一切わからなかったんですよ」
木暮「それは俺もわかるな(笑)」
UK「彼は体育会系なんで、それこそ上下関係とかを大事にしてたんですけど、僕はそういうのをぜんぜん経験してこなかったんで、本当に理解できなくて。それで〈ちょっとごめん。全然わかんない〉って。彼にとってはすごく誠意のある言葉だったと思うんですけど、その良さも全然わからなくて、それでちょっと空気が悪くなった(笑)」
木暮「おもしろいな(笑)。僕らはいまちょうどレコーディング中なんですけど、曲のアレンジをしているときに、なんとなく俺の話したことが、どうもバンド内で共有されちゃってるみたいで」
――どんな話ですか?
木暮「ジャズからフュージョンに移り変わったり、ジャズの人がヒップホップを採り入れたり、そういうちょっとした転換期に、黒人は1回宇宙に向かうよね、みたいな話なんですけど」
UK「あははは(笑)」
木暮「最新のCGとかじゃなくて、それこそ、80年代のSF映画みたいな変な銀ラメの肩パットをつけてるような宇宙感が、ブラック・ミュージックの転換期にはあるんだよねと。そんな話をしていたら、他のメンバーがそういったコズミック感を勝手に解釈して、ギターにちょっとエフェクターをかましたりしはじめた。だから、おもしろいんですよね。そういうちょっとした会話が共有されていくのは」
ツーマンしたいのは、ただのラーメンじゃなくて〈二郎〉
――両バンドの共通項がちょっとずつ見えてきましたね(笑)。とはいえ、リスナーからすれば、今回のツーマンはやはり異色の組み合わせだと思うんですよ。特にMOROHAの場合は、このツーマンという形式にかなりこだわっている印象もあるんですが。
UK「これは僕個人の話ですけど、そもそもワンマンというものがあんまり好きじゃないんですよ(笑)。別にそれにはたいした理由もないんですけどね。単純に自分が恥ずかしいというか」
木暮「恥ずかしいって(笑)」
UK「まあ、そこは性分なのかもしれないですね。それよりも自分たちのことをまったく知らない人がライヴハウスにいて、その人が自分たちを好きになっていくという光景のほうが僕は好きなんです。で、なんでツーマンにこだわるかというと、これは完全に自分たちのエゴ。先ほど仰っていたように、僕らは逃げ場のない勝負がやりたいんですよね。3、4バンドで仲良く地方を回るとかじゃなくて、その日にしかできない男同士のケンカがしたいというか」
木暮「ケンカ(笑)!」
UK「いやいや、これはひとつの喩えですよ(笑)。でも、僕はそういうライヴが好きだし、とにかくおもしろい人たちとやりたくて」
――その、おもしろい人たちというのは?
UK「ロックとかヒップホップとか、そういうものでは括れない人というか。ラーメンでいうと、僕はラーメンじゃなくて、〈ラーメン二郎〉みたいな人たちとやりたいんですよね。俺はラーメンが食べたいんじゃない。〈二郎〉が食べたいんだという(笑)。そういうパワーをもった人たちと、ツーマンがやりたいですね」
木暮「ハハハハ! すごくいい喩えだね」
――the band apartにも、その〈二郎〉みたいな感じがあるってこと?
UK「あります、あります!」
木暮「あるかなー(笑)。僕らも最近は年下のバンドとやることも多いんですけど、こうしてUKくんの話を聞いてると、彼はもう一癖も二癖もあるじゃないですか」
UK「わははは(笑)」
木暮「そういうところも含めて興味が湧いてくるし、人間的にものすごく好きなタイプですね。そういえば、新しいアルバムに“それいけ! フライヤーマン”という曲があるでしょ?」
UK「はい」
木暮「あの曲はアフロくんのフロウに、いわゆるラップっぽさがあるんだよね。あれを聴いて〈ああ、こういうこともできる人なんだな〉と思った。アフロくんは自分のスタイルを作ったうえで、今回こういうスタンダードなフロウを見せたのかなって。あと、僕は“RED”がいちばん好きだったな。あれは地元でくすぶっている時の歌じゃん?」
UK「そうですね」
木暮「あの曲を聴いてると、モラトリアムから成り上がっていく姿を勝手に想像できるんだよね。それがすごくロマンティックだと感じた。背後で鳴ってるギターもその物語に沿っていて、ものすごくいろんな工夫を凝らしている。すごく考えてるよね? 今日、こうして話を聞くまで、〈叙情的なコード進行が好きなんだろうな〉と思ってたんですけど、実はそうじゃなかったし、また聴き方も変わってくるな。ただ、僕らはちょっと閉じ気味なところもあるので、こうして彼らから〈the band apart に勝ってやる!〉みたいに言われると、〈お、おう…〉みたいになるんですけどね(笑)。僕らはそういう意識がないまま来たので、これはヤベェなと」
――その舞台が、ここキネマ倶楽部となるわけですが。
UK「僕、ここに来たのは今日が初めてなんですよ。なんかもう、想像するだけでいいライヴになりそうだなと思いましたね」
木暮「MOROHAがどういうふうにここでやるのか、すごく楽しみ。早く観たいですよ」
UK「僕らもthe band apart、すごく楽しみです。男同士のケンカにしましょう(笑)」
LIVE INFORMATION
東京キネマ倶楽部プレゼンツ〈ヨカノスゴシカタ 4〉
2017年6月16日(金)東京キネマ倶楽部
出演:the band apart、MOROHA
開場/開演:18:15/19:00
料金:前売り ¥3,800(1D別)/当日 \4,300(1D別)
チケット一般発売 4/22(土)~
イープラス: http://eplus.jp/616kinemaclub/
チケットぴあ: 0570-02-9999 Pコード[328-744]
お問い合わせ:東京キネマ倶楽部 03-3874-7988
★詳細はこちら