ベスト盤を挿んでおよそ7年ぶりとなる9作目。バンド路線だった前作を経て、辻村兄弟と昨年の25周年ツアーでも鍵盤を弾いた野村卓史による3人編成が基本となった。素描のようなシンプルさのなかにメロウでエキゾティックな風合いが増していて、石川啄木の詩にメロディーを付けた“卯月の夜半”のように抽象的な側面もあるが、キセルらしい情緒は揺るぎない。