今年は村上春樹の新作発売やトークショー開催等々、村上主義者にとって朗報の連続だったことだろう。新作は海外の読者に徐々に届けられているが、一方で驚嘆させられたのは全9巻に及ぶ長大なコミックのシリーズ化。「バンドデシネ(フランスの漫画)」による初の春樹ワールド。バンドデシネは独特なタッチで描かれる物語と色調が特徴的だ。第一弾は短編小説の中でも人気の高い『パン屋再襲撃』。一体全体どのような作品として我々の眼の前に現れるのか。原作をベースに翻案されているが、物語は小説の世界を崩していない。そして見事な色彩感に目を奪われる。