〈ゲッツ!〉という一言で世間を賑わした芸人がいたことを思い出した。この伝記が取り上げるスタン・ゲッツは、誰もが知っているジャズ・ボサノヴァ名盤『ゲッツ/ジルベルト』のゲッツ、ソフトな音色と圧倒的なテクニックでジャズ界にその晩年に至るまで君臨したテナー奏者である。我々ファンは生演奏を体験したり、レコード、動画などの記録によって音楽家像を作りあげ、それぞれが微妙に異なる音楽家像を懐で育てつつ音楽の作り手への思いを募らせる。そしてある時ついに、こうした全うな評伝、伝記の登場によって勝手な解釈、捏造が修正されるのだ。そう、つまりゲッツ、リアルに〈ゲッツ!〉なのである。
ドナルド・L・マギン 「スタン・ゲッツ- 音楽を生きる-」 村上春樹訳、まっとうな伝記こそがリアルな音楽家像を提示するのだ
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