選んだ道こそ運命になる――5周年を祝う傑作シングル
5年という歳月がいかほどの長さなのか、単純に考えてもその重みを推し量るのは難しくありません。そうでなくても、井次麻友と藤井美音のふたりが注いできた5年分の想いと情熱が、いま、このユニットにさらなる輝きをもたらしているのは間違いないでしょう。鳥取を拠点に2012年8月24日から活動を始めたChelip。いわゆる〈ご当地アイドル〉的なスタンスから徐々に県外でパフォーマンスする機会も増し、楽曲性の高さもあって早耳なリスナーたちの注目を集めるに至っていたグループです。今回は5周年の節目を飾る通算7枚目のシングル『輝る風の中の全て/これって恋だと思うんだ』リリースにあたって、いろいろ伺いましたが……話が長すぎたので、こちらではbounce本誌掲載分よりも超ロング・ヴァージョンでお届けします!
遠回りだったけど
――ニュー・シングルは5周年を謳ってのリリースですが、Chelipになる前から数えると出会ってから長いですよね。
藤井美音「もう10年くらい経つ?」
井次麻友「長いね~、長いな~」
美音「米子でサンミュージックのアカデミーに入ってレッスンしてた期間と、地元のTV局のマスコット・キャラクターをPRするラッテフレンズっていうのをやってた期間があるんで、けっこう長いですね」
――最初に会った時の印象って、互いに覚えてますか?
麻友「覚えてますよ(笑)。すんごい真面目そう!って思った。まあ、いまも……そこそこ真面目だけど」
美音「そこそこ(笑)。そんなにか」
麻友「あと、初めてのレッスンの時、ずっと緊張してる感じだったのは覚えてるな」
美音「まあ、確かにそうかもしれない。美音は、母が勝手に履歴書を送って、入所して」
麻友「あるあるやな」
美音「やってるうちに楽しくなってきたけど、最初は何すればいいかわからなくて」
――麻友さんの第一印象はどうでしたか。
美音「地元のサンミュージックの1期生ということでいろんな年齢の子が集まってたんですけど、そのなかでも麻友は、ちょうど何かイイ感じの時期、中学3年生ぐらい? 一番こうピチピチで」
麻友「パンパンやったな(笑)、パンパンのまんまる」
美音「けど、やっぱり合唱とかやってたから、人前に立つことにもう慣れてて、物怖じしてない感じだった」
――小学生の頃からやられてたんですか?
麻友「ミュージカルみたいなのをやってました」
美音「緊張してないというか。まあ、そこはいまも変わってないですけど(笑)。あとね、みんながイモっぽいなかで、麻友は当時からメイクとかファッションとか凄い好きだったから。たぶん東京とかの子から見たら、全然イモっぽいけど、でも、地元の子からしたら、〈あ、ちょっと違うな〉みたいな、やっぱり。〈おー、オーラあるな〉みたいな(笑)」
――垢抜けてる感じで。
美音「そうです、そうです」
麻友「あの時はな。あの時は、ホントあの時は。〈あの時は〉感が拭えねえ」
――そういう大人数の中でも、わりと最初から仲が良かったほうですか?
美音「もともとレッスンも年齢とか関係なく名前で呼び合うような雰囲気でしたけど、麻友は昔からやってるっていう意味でレッスンにどんどん参加するし、私は元が凄い負けず嫌いだから〈やるならトコトンやってやろう〉ってタイプで。2人ともタイプは違うけど前に出るほうだったから」
麻友「セットで何かやることが多かったな」
美音「そう、先生の目に留まって〈麻友と美音でやってみて〉っていうことが多くって。けっこう最初から一緒にいる感じでしたね」
麻友「だいたいそうだったな」
――そこからChelipを結成することになったのは、どういうきっかけだったんですか?
美音「そこから選抜された何人かで、ラッテフレンズっていう歌のお姉さんみたいなことをやってて、その頃から美音は凄いしゃべるし、麻友も物怖じしないし、優先的にマイクをもらうことが多かったんです」
麻友「MCとかもな」
美音「そのなかで県の〈国際まんが博〉っていう事業があった時に、ラッテフレンズから麻友と美音でその中のステージの司会をやってくれないか?って話があって」
麻友「コスプレして(笑)。あった、そんな時もあった」
美音「でも、平日のお昼だと人も全然いないんですよ。もう0人。県の方たちが気を遣って観てくれたりしてるぐらいで」
麻友「平日はホントに人いなかったね」
美音「だけど、いただいたお仕事だったからちゃんとやり遂げたいなって思ったし、〈誰もいなくてもちゃんとやろうね〉って2人で言ってたんです。それを見てくださってた、最初のプロデューサーのますみさんが」
麻友「小川ますみさんが」
美音「〈2人でユニットをやらない?〉って言ってくださって。それでファミレスに呼び出されて、〈30分で名前決めて〉って言われて」
麻友「そこにあった紙ナプキンに何個か書いて、〈じゃあ、これで〉みたいな」
――自分たちで決めた名前なんですね?
麻友「そうそう、即行で。その時に流行ってたさくらんぼ、チェリーとリップで〈チェリップ、いいか〉みたいな」
美音「〈鳥取と関係ないけど、いいよね〉みたいな。あと、〈パピプペポ〉可愛いから」
麻友「破裂音がね」
美音「〈可愛いから入れよう〉みたいな。ますみさんもサンミュージックで元はパンプキンっていうアイドルをされてて、そこにも〈パピプペポ〉入ってるから」
麻友「〈いいんじゃん?〉って」
美音「そこは継承させたいっていうのもあったみたいなんですけど」
――そうやって始まって5年経ちましたけど、まあ、いろいろあったじゃないですか?
美音「いろいろありましたよね? 凄いですよね、でも、こうやって続けてるのって、それでも(笑)。自分たちでも思うもんな?」
麻友「うん」
――去年とかはいろいろ表立って心配していた人とかも多いと思うので。
美音「そうですよね、周りから見たら大変でしたよね。けどもう、それ以外にもいろいろとありすぎて。だって、ファースト・シングルを流通にも乗ってないのに2000枚とか作っちゃったとこから」
麻友「しんどっ!」
美音「同じCD、2年売ってましたから(笑)」
麻友「うん」
美音「ファンの人、それでも買うものがいっぱいあるわけじゃないから、同じCD買ってくださって」
麻友「マジでもうホントに申し訳ない」
美音「とかもありますし、途中から家族運営になって、どっちの親も共働きだから営業が凄いかけられるわけでもないし。だから、〈また観たい〉〈また呼びたい〉って思ってもらえるように、行くライヴ、行くライヴ、もう毎回が凄い大切な勝負みたいな。そういう感じでここまできたので、まあ、歩みはやっぱ遅いですよね。それこそ自分たちより後にデビューされた方たちがガンガン売れていってるのとか見ると、凄いな、いいなって思うけど。それでもChelipなりのペースでやってきたからこそ出会えた人たちもいるし、いまのChelipの流れだからやれたこともいっぱいあるので、遠回りだったけど、無駄なことはひとつもなかったと思います」
――そうですね。40年くらい生きてきた人の発言みたいですけど(笑)。
麻友「ね! それは思う、凄い思う(笑)」