(C)Juan Patino

 

2人で演奏しているとは思えない! 世界各地で驚きを巻き起こす驚異のデュオ

 上原ひろみの口からは、エドマール・カスタネーダを絶賛する言葉が幾度も繰り返された。曰く「見たことも聴いたこともない、想像もしたこともない音」、「魔法使いみたいなハーピスト」、「ファンタジアみたい」、「未知との遭遇という言葉がぴったり」等々。彼女が、コロンビア出身でニューヨークのジャズ・シーンで活躍するカスタネーダに〈遭遇〉したのは、昨年6月のモントリオール・ジャズ・フェスティヴァルでのステージだった。たまたま前後して出演することになり、ステージの袖でその演奏に釘付けになったという。

 「そこで出会って1ヶ月後に、ブルーノートNYの私の公演でいきなりゲストとして出てもらったのです。サウンドチェックの時にお互いが初めて音を出した瞬間のことはエドマールも〈忘れない〉と言っていて、〈ピアノとハープというのは楽器の特性が似ていて、音域を合わせるのが難しいというイメージがあったのに、そんなことはまったくなくて自分が自由に演奏できて音がどんどん拡がっていくことに感動した〉と言ってました。私も本当にそうで、これは運命的な出会いだなと感じました」

 コロンビアやベネズエラでは多くのストリート・ミュージシャンがアルパと呼ばれるラテン・ハープを演奏している。カスタネーダはそれを見て独学で学び、そしてジャズの世界で通用する楽器にまで引き上げてみせた。ちなみに、グランド・ハープは半音階が出るが、それより小さいアルパは全音階だけだ。

 「半音階が出ないという制約の中で、どう曲を書くか、どう演奏で埋めるかを考えました。楽器の持つ特性を教えてもらい、自分でも学んで、その制約を感じさせない曲を作っていったら四部作になったんです」

上原ひろみ,EDMAR CASTANEDA ライヴ・イン・モントリオール ユニバーサル(2017)

 二人のデュオのデビュー作であるライヴ・アルバム『ライヴ・イン・モントリオール』には、彼女の作曲した四部作“ジ・エレメンツ”の他に、カスタネーダによるジャコ・パストリアスに捧げた“フォー・ジャコ”などが全9曲が収められている。ピアノとハープという組合せがイメージさせる静謐さや穏やかさを、鮮やかに裏切るような演奏である。

 「まずハープがあれだけベース音を出すことにお客さんは驚く。ベースアンプを使って、ジャコみたいなグルーヴを作って、それで私に渡すから、私もベースを弾くとまたお客さんが驚くんです」

 二人は、北米、ヨーロッパ、南米を回り、各所で驚きを巻き起こしてきた。11月から12月にかけては待望の日本ツアーが決定。「末永く続くプロジェクト」だと上原が断言する二人の演奏に触れる機会はもうまもなく訪れる。

 


LIVE INFORMATION

上原ひろみ × エドマール・カスタネーダ TOUR2017
○11/22(水)神戸国際会館こくさいホール
○11/24(金)~26(日)ビルボードライブ大阪
○11/28(火)~30(木)コットンクラブ
○12/1(金)~3(日)ブルーノート東京
○12/5(火)名古屋 三井住友海上しらかわホール
○12/6(水)福岡国際会議場 メインホール
○12/7(木)静岡市民文化会館 中ホール
○12/8(金)すみだトリフォニーホール

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