2017年9月16日にデビュー25周年を迎えた安室奈美恵。それから4日後、誕生日を迎えた彼女から届けられた決意のコメントは、2018年9月16日をもって引退するという衝撃的なものだった。そんななか、彼女から新たに届けられたのは、25年のキャリアを通じたオールタイム・ベストアルバム『Finally』。全52曲、3枚組という作品構成で、彼女の活動の足跡を辿っていくことが出来る、そんな内容になっている。
2017年9月16日にデビュー25周年を記念して、故郷の沖縄で凱旋ライブを行った安室奈美恵。それから4日後、誕生日を迎えた彼女から届けられた決意のコメントは、2018年9月16日をもって引退するという衝撃的なものだった。誰もが想像だにしなかった引退という選択肢をなぜ選んだのか。その理由は語られておらず、憶測が飛び交っているが、そう決断が下されてからというもの、膨らむ喪失感と共に彼女が残した数多くの名曲、その宝石のような輝きは日に日に強まっている。
そんななか、彼女から新たに届けられたのは、25年のキャリアを通じたオールタイム・ベストアルバム『Finally』だ。全52曲、3枚組という作品構成のこの作品は、シングルで発表された45曲(そのうちの39曲にはこの作品のために新たな録音が施されている)に加え、パッケージ初収録となる“Christmas Wish”、6曲の新曲を年代順に収録しており、活動の足跡を辿っていくことが出来る、そんな内容になっている。
では、この作品から浮かび上がってくる安室奈美恵とはどんなアーティストなのか。音楽的には、彼女がアーティストを志すきっかけとなったとされるジャネット・ジャクソンやマドンナといった世界のスーパースターがそうであるように、ダンスポップを軸に、その時々の最新トレンドを取り入れ、音楽性を更新し続けるという欧米のメインストリームにおけるポップスタイルの日本における希有な実践者であるということに尽きる。しかし、言うは易く行うは難いどころか、奇跡に近い。音楽のトレンドやリスナーの嗜好が目まぐるしく変化する状況に対応し、作品のクオリティを維持しながら、リスナーの期待に応えながら、その時々で最良の楽曲を選択し、ヒットを連ねていくことが出来るアーティストは、〈ポップスにヒットの方程式はない〉と言われる世界のポピュラーミュージック史においてほんの一握り。そして、それを25年に渡って実践し続けたのが、安室奈美恵その人だ。
この作品の〈Disc 1〉には、バブルが崩壊を迎えた1992年に発表されたSUPER MONKEY'S名義のデビュー曲“ミスターU.S.A.”から安室奈美恵 with SUPER MONKEY'S、安室奈美恵にアーティスト名を改めるとともに、サウンド面ではユーロビートを打ち出した“TRY ME ~私を信じて~”、“太陽のSEASON”といった初期のヒット曲。1995年にエイベックスへの移籍を果たし、“Body Feels EXIT”から始まった小室哲哉プロデュース時代において、229万枚のセールスを記録した“CAN YOU CELEBRATE?”や“SWEET 19 BLUES”といった数々の代表曲が収録されている。
そして、〈Disc 2〉は、小室氏の手を離れ、2001年の“Say the word”から始まるセルフ・プロデュース時代の楽曲が収録されている。この時期から現行のヒップホップ、R&B、ダンスポップへぐっと歩み寄り、300万ダウンロードを記録した“Love Story”や“Baby Don't Cry”、モータウンソウルの名曲、スプリームスの“Baby Love”をリメイクした“NEW LOOK”といった安室奈美恵の新たなスタンダードは、新たなサウンドと勇敢なトライアルによってもたらされたものだ。
東日本大震災における海外から受けた多大な支援を受けたことに対する感謝の気持ちを込め、フリーダウンロードで全世界に配信された“arigatou”で幕開ける〈Disc 3〉は、ミュンヘンディスコとEDMが融合したダンストラック“In Two”をはじめ、TBS系 火曜ドラマ「監獄のお姫さま」主題歌“Showtime”、フジテレビ系アニメ「ONE PIECE」主題歌“Hope”、Hulu CMソング“Do It For Love”、日本テレビ系「NEWS ZERO」テーマ曲“Finally”、NTTドコモ25周年記念CMソング“How do you feel now?”からなる6曲の新曲を収録している。
その歌声にはライブにおいて一切のMCを行わず、ポップスターというフィクショナルな役割に徹してきた彼女の現在の心境、新しい世界に向けられた高揚感や切なさや感謝の念といったあふれる感情が映し出されており、様々な思いを抱えて、彼女は2018年2月から予定されている5大ドーム、アジア公演を含む国内外ラストツアーに臨む。