ONEOHTRIX POINT NEVER
カンヌ映画祭で話題を呼んだ「グッド・タイム」の日本公開に合わせて、ダニエル・ロパティンによるサントラのディレクターズ・カット版が登場!
本年度、第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出されたサスペンス映画であり、音楽を手掛けたワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)ことダニエル・ロパティンに同映画祭のサウンドトラック賞を授けた「グッド・タイム」。本編のメガホンを取ったのは、主演したアリエル・ホームズの実体験に基づいてドラッグに溺れる若者たちの日常を描いた「神様なんかくそくらえ」(2014年:こちらの音楽はアリエル・ピンク)で知られるジョシュ&ベニー・サフディ兄弟だ。同作もまた東京国際映画祭にてグランプリと最優秀監督賞をダブル受賞するなど高い評価を得た作品だったが、今回はNYのクイーンズを舞台に、銀行強盗を企てるも失敗した兄弟を描いている。
逮捕されて刑務所内で酷い目に遭い、暴れて病院送りとなった弟ニック(ベニー・サフディ)を兄コニー(ロバート・パティンソン)が救い出そうとするストーリーで、コニーを演じた主演のロバート・パティンソンが〈キャリア史上最高の演技を披露している〉と激賞を浴びたことも記憶に新しいだろう。8月に全米公開された際にはセレーナ・ゴメスやウィークエンドらからも大絶賛され、この11月3日からいよいよ日本での公開もスタートすることになった。
で、その日本上映に合わせたグッドタイミングでリリースされるのが、OPNによるサントラの〈ディレクターズ・カット版〉ともいえる『Good Time... Raw』だ。もともとオリジナルのサウンドトラック『Good Time』は全米公開に合わせて8月にワープからリリースされていたわけだが、兄弟の片割れであるジョシュ・サフディが〈映画のままでサントラを聴きたい〉とリクエストしたため、このたび完全版の『Good Time ... Raw』が制作されることになったのだそう(ということで、ライナーノーツはそのジョシュが執筆している)。今回は全曲がフィルム・エディットに調整され、エンディング・テーマとなったイギー・ポップとのコラボレーション“The Pure & The Damned”に至るまで、映画本編の流れに沿った曲順で収録されている。先行して解禁された新曲“Elara To Alley”など、オリジナル版にはなかった曲も追加されているので、「グッド・タイム」の世界をより深く理解するのにも必聴だろう。
オリジナルのサントラが音楽リスナーたちにも注目を集めたのは、従来のOPNなどにはない新たな側面をロパティンが見せていたことだろう(当然ながら、映画音楽ゆえの作風という意味合いも大きいのだろうが)。もちろん、殺伐としたドライな映像が印象的な本編とシンクロするように、不穏な音像や無機質な感触で圧倒してくる電子音を軸にした作りには、OPNらしさに溢れたロパティン固有のタッチを見い出すことができるはずだ。ただ、シンセのアルペジオを多用し、いつになくメロディーを前に出したスコア然としたトラックは、彼の音世界にしては耳馴染みの良さがあるようにも思える。これが今後の作法にどう影響していくのか……間にはアノーニのプロデュースなども手掛けつつ、オリジナル作としては2015年の『Garden Of Delete』から少し間が空いているOPNの、この先が楽しみにもなる一作だ。
映画「グッド・タイム」
11/3(金・祝日)ロードショー
公式サイト:http://www.finefilms.co.jp/goodtime/