ウィーン国立歌劇場でデビューを果たした、藤木大地が歌う日本のうた

 日本でも、ようやく認知されてきたカウンターテナーという素晴らしい声質で、いまや国際的にも高い評価を受けている藤木大地。バロック・オペラや現代オペラの分野で目覚ましい活躍を続けている。2013年にウィーン国立歌劇場とゲスト歌手の契約を結び、2017年4月6日には、アリベルト・ライマンのオペラ「メデア」のヘロルド役で、同歌劇場にデビューした。ウィーンの新聞には、〈まばゆいばかりの響き、安定感、繊細さを兼ね備えたカウンターテナー〉〈彼ほど凄まじいコロラトゥーラを完璧にコントロールできる歌手はいない〉などと絶賛された。

 最初はテノールとして東京藝大で学び、新国立劇場の研修生を経て、2003年同劇場にデビュー。その後ウィーンに留学中の2011年にカウンターテナーに転向した。そのきっかけは風邪だった。やらなければならない課題があり、ためしに裏声で歌ってみたらいい声が出た。友人や先生に聴いてもらって自信をつけ、カウンターテナーに師事して本格的に勉強した。そしてついに、歌っていて楽しく、自分でコントロールできるのが面白くなり、31歳で転向を決意したのだ。

 それから多くの国際コンクールに挑戦して入賞を果たし、2012年には日本音楽コンクールで見事第1位受賞。コンクール史上、初めてカウンターテナーが1位になったと話題を呼んだ。2013年にはボローニャ歌劇場にもデビューし、同年日生劇場で行われたライマンの「リア」にもエドガー役で出演した。2016年に兵庫で行われたブリテン「真夏の夜の夢」にオーベロン役で出演。2017年4月に初のCD「死んだ男の残したものは」をリリースするなど、快調にキャリアを進めている。今年の11月には鈴木優人指揮の「ポッペアの戴冠」に出演して話題になり、ニューイヤー・オペラコンサートにも5年連続で出演を果たす。

 藤木大地の声は高く澄んでいて、聴いていると心が癒されるような落ち着いた声質を持っている。低めのメゾソプラノの音域で、装飾音符を駆使した華やかなコロラトゥーラのテクニックもマスター。その個性的な声で、来年2月4日にリサイタルを開く。曲は日本の歌曲が中心だが、ヴォーン・ウィリアムズやバーンスタインの曲も入り、日本の現代作曲家に藤木が委嘱した歌曲も含まれるという、バラエティに富んだプログラム。「現代音楽をやっていて楽しいのは、作曲家と話し合いながら、音楽を一緒に創っていく喜びがあること。常にチャレンジしていかないとチャンスはないし、面白くはないですから」。そう語る藤木大地のリサイタル、カウンターテナーという新しいジャンルの魅力を発見できる、貴重な機会になるに違いない。

 


LIVE INFORMATION

Music Program TOKYO シャイニング・シリーズVol.2
藤木大地カウンタテナー・リサイタル

○2018年2/4(日)14:30開場/15:00開演
会場:東京文化会館 小ホール
出演:藤木大地(C-T)松本和将(p)
曲目:瀧廉太郎:花/R.ヴォーン・ウィリアムズ:リュートを弾くオルフェウス/岡野貞一:春の小川/中山晋平:ゴンドラの唄/H.ハウエルズ:ダヴィデ王/弘田龍太郎:叱られて/近衞秀麿:ちんちん千鳥/山田耕筰:鐘がなります/別宮貞雄:さくら横ちょう/中田喜直:ゆく春/L.バーンスタイン:「ミサ」より シンプル・ソング/武満徹:死んだ男の残したものは/林光:「四つの夕暮の歌」より 死者の迎える夜のために/小林秀雄:落葉松/木下牧子:鴎/西村朗:木立をめぐる不思議(2015)*/増田真結、清水慶彦:山頭火による挽歌《白い凾》(2015)*/加藤昌則:てがみ(2016)*
*藤木大地委嘱作品
www.t-bunka.jp/stage/host_10390.html