4月にウィーン国立歌劇場デビュー! 世界に羽ばたく期待のカウンターテナー
「じつは、パヴァロッティになりたかったんです」という藤木大地さん。初めて買ったパヴァロッティのCDに魅せられ、「あんな声が出したい!」と歌手を目指した。テノールとして東京芸大から新国立劇場のオペラ研修所で学び、イタリアやウィーンに留学した。それがある日、カウンターテナーに転向したのだ。
「ウィーンで学んでいた2010年の夏、風邪をひいて声が出ないので、裏声で歌ってみたら きれいに響いた。友人30人くらいに聴いてもらったら、好評だったので、先生についてレッスンを受けることにしました」。高音も出るし歌いやすく、なにより楽しかったという。そこで、思い切って転向を決意した。
「それが2011年。31歳になっていたので、早く結果を出さなくてはと、人生をかけてコンクールを片っ端から受けました」。多くの国際コンクールに入賞し、2012年には日本音楽コンクールで第1位受賞。初めてカウンターテナーが1位になったと、大きな話題を呼んだ。13年にはボローニャ歌劇場にもデビュー。また日本でもアリベルト・ライマンの『リア』でエドガー役を歌って注目を集めた。同年、ウィーン国立歌劇場のオーディションに合格、ソリストとして契約した。そしてついに4月7日、ウィーン国立歌劇場の本公演でデビューすることになった。ライマン作曲のオペラ『メデア』で、ヘロルドという役柄だ。
デビュー初日の4月7日に合わせ、日本でのデビューCDとなる『死んだ男の残したものは』が発売される。イギリスの古い民謡や日本の歌から武満徹まで、バラエティに富んだ懐かしい曲目が並ぶ。
「日本の歌を入れたのは、好きだから。日本の歌もイギリスのフォークソングも、生活の中で生まれたごく自然なテキストによっている。父の死や初恋など、人生経験の引き出しから、いろいろ感じてもらえたら」
武満徹のソングスがタイトルになっているのは、この曲に特別な思い入れがあるからだ。「谷川俊太郎さんの詩の重みを感じたからです。テレビ番組で歌った時、谷川さんにも聴いていただいて、ありがとうと言われました。この曲には暗さだけでなく、未来への希望や人類の将来に対する明るい希望があると思う。海外でも発売するので、ジャケットは日本からの発信という意味を込めて、スカイツリーが遠くに見えます」共演は日本を代表する豪華な顔ぶれが並ぶ。「いつもコンサートでご一緒させていただいている方たちで、その曲に最大に合った楽器の方々と共演できました」
藤木大地の声は、カウンターテナーの中でも落ち着いた、哀愁漂う響きだ。音域は低いメゾ・ソプラノ。この個性的な声で、世界に大きく羽ばたいて欲しい。
LIVE INFORMATION
大阪フィルハーモニー交響楽団第507回定期演奏会
○4/25(火) 26(水)18:00開場/19:00 開演 会場:フェスティバルホール
出演:森麻季(S)藤木大地(C-T)与那城敬(Br)大阪フィルハーモニー合唱団 大阪すみよし少年少女合唱団
曲目:ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92/オルフ:世俗カンターター「カルミナ・ブラーナ」 ワンダフルoneアワー
藤木大地カウンターテナー・リサイタル
○5/19(金) 15:00/19:30 開演 会場:Hakuju Hall
曲目:シューマン:詩人の恋人op.48ほか
出演:藤木大地(C-T) 松本和将(p)
www.mafara.com/Artists/Detail/Fujiki