ワンテーマで引っ張るPファンク精神 × 日本史愛が炸裂する〈レキシ芸〉の最新型! 今回もヒストリカルなパンチラインが続出です!!

 池田貴史のソロ・ユニット=レキシがレーベル移籍第1弾となる新作『レシキ』を完成させた。ソウル/ファンクをベースにしたゴキゲンなサウンドに日本史を題材にした歌詞を乗せる……というトリッキーなスタイルゆえに、当初は打ち上げ花火的なプロジェクトとも思ってしまったものだが、ワンテーマで延々と引っ張るPファンクの精神を継承するが如く、コンセプトを一切曲げぬままにリリースを重ね、気が付けばこれが4枚目のオリジナル・アルバム。気の置けないプレイヤー陣によるソリッドなアンサンブルに磨きをかけ、二度聴きを誘うヒストリカルなパンチラインを散りばめ、今回も〈レキシ芸〉とでも言うべき独自のエンターテイメント・ワールドを堂に入った立ち回りで演じている。

レキシ 『レシキ』 伽羅古録盤(2014)

 作品ごとに豪華なゲスト・ヴォーカリストを招くことでも話題を集めるレキシだが、本作にも他ではお目にかかれない取り合わせの面々が(恒例の〈レキシネーム〉を与えられたうえで)集結し、華を添えている。女性陣から見ていくと、岡っ引きとのラヴ・ストーリーをソウル・ポップに仕立てた“キャッチミー岡っ引きさん”にはもち正宗(持田香織)が、生類憐みの令をテーマにしたジャジーな“お犬様”には尼ンダ(二階堂和美)が登場し、しなやかな歌声を披露。ラストを飾る壮大なバラード“アケチノキモチ”では阿部 sorry 大臣ちゃん(阿部芙蓉美)のブルージーな歌声が胸を締め付ける……のだが、そこに本能寺の変をネタにした珍妙なフレーズを織り込んで脱力させてしまうのがレキシらしい。

 一方の男性陣は、パワフルなディスコ・チューン“ドゥ・ザ・キャッスル”に北のパイセン問屋(怒髪天)がトゥー・マッチな熱気を注ぎ込んでいるほか、年貢の納入をラヴソングになぞらえた“年貢 for you”には旗本ひろし(秦基博)とレキシ作品ではお馴染みの足軽先生(いとうせいこう)が参加。秦のシルキーなヴォーカルと、オールド・スクール・マナーで洒落のめす、いとうのラップとの相性もバッチリだ。そして、アルバム中でもっとも奇っ怪な仕上がりを見せているのが、ニセレキシ(U-zhaan)のタブラの上で池田がアブストラクトな語りを紡ぐ“Takeda'”。言葉で説明不能なその味わいは、ぜひ各人の耳で確認してほしい。

 盟友のシャカッチ(ハナレグミ)を迎えた“憲法セブンティーン”など、オーセンティックなファンクの流儀に即したナンバーももちろん盛り込まれているのだが、アルバム全体としてはジャンルレスなごった煮感がより極まった印象で、レキシ史上(てのも変だが)もっともヴァラエティーに富んだキャッチーな一枚と言えるだろう。あえて括るなら広義のシティー・ポップと言えるかもしれないし、グルーヴィーですこぶる親しみやすいという点で、ゴダイゴやスキマスイッチが引き合いに出せるかもしれない。ともあれ、過剰な日本史愛に支えられた〈レキシ芸〉を貫きつつも、過去最高に開かれた、ポピュラーな音世界がここにあることは間違いない。

 

▼『レシキ』に参加したヴォーカリストの作品を一部紹介
左から、Every Little Thingの2014年作『FUN-FARE』(avex trax)、秦基博の2013年作『Signed POP』(ARIOLA JAPAN)、□□□の2013年作『JAPANESE COUPLE』(commmons)、二階堂和美の2013年作『ジブリと私とかぐや姫』(YAMAHA)、ハナレグミの2013年のカヴァー集『だれそかれそ』(スピードスター)、怒髪天の2014年のミニ・アルバム『男呼盛 “紅”』(インペリアル)、阿部芙蓉美の2013年作『HOW TO LIVE』(3rd Stone)
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 ここでは池田貴史の関連作品を紹介! SUPER BUTTER DOG、100sの一員として活動してきた池田は、〈日本史に造詣が深い〉〈ファンキーなエンターテイナー〉という自身の特性を活かしたソロ・ユニット、レキシとして2007年に初作『レキシ』(ユニバーサル)を発表。以降は2011年の『レキツ』(cutting edge)、翌年の『レキミ』(commmons)と3枚のオリジナル作を上梓し、多彩なゲストと共にソウルフルな〈レキシ芸〉を更新します。また、彼はプロデューサーや鍵盤奏者として外部作品にも携わり、前者なら私立恵比寿中学『中人』(DefSTAR)に収録の“頑張ってる途中”が、後者ならサンボマスターの2013年作『終わらないミラクルの予感アルバム』(Getting Better)が最近の作品。どれも池田らしいエンタメ感が炸裂した仕上がりですよ! *bounce編集部
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