多様な外仕事で名を広めたこの2年を糧に、土台にあるサンプリングの手法に加わった新たなアプローチ──トラックメイカーからコンポーザー、アレンジャーの領域へと踏み出して描かれる〈理想の場所〉とは?

劇的な変化

 PUNPEEをフィーチャーした2016年を代表するアンセム“夜を使いはたして”を収録したアルバム『Pushin'』でヒップホップ・シーンに華々しく登場したSTUTS。明度の高いキャッチーなサンプリングのコラージュと、太くしなやかなグルーヴの共存に突出した個性を感じさせるトラックメイカーである彼は、部屋を飛び出すと、サンプラーであるMPCを叩き、フロアにグルーヴをもたらすMPCプレイヤーでもある。

  「高校1年生の時、自分でラップをしようと思ってそのためのトラックを作りはじめたら、トラック作りのほうが向いているなって。その後、クラブでDJを始めたんですけど、人前でもっと自分の曲を聴いてもらうためにライヴの方法を考えているなかで、アンチコンのジェルやHIFANAがMPCを叩いてライヴをやっていることを知って、自分もMPCを叩いてライヴをするようになりました。トラックメイカーとしては、当初はラッパーにビートを提供していたんですけど、提供しているだけだと100%自分の思い通りにはならないので、いつかは自分の作品を作りたいなって。2016年に発表したファースト・アルバム『Pushin'』は、自分が大好きなサンプリングの手法にこだわった作品であり、それ以前に作り貯めたトラックから選んだ曲を収録したもので、アルバムを出そうと思って曲を作ったわけではなかったので、今回の『Eutopia』は、アルバムを見据えて曲を作った初めての作品になります」。

 昨年6月にシンガー・ソングライターのAlfred Beach Sandalとのコラボ盤『ABS +STUTS』を発表したほか、ライヴ活動と並行して星野源やDAOKO、iriやJJJら数多くのプロデュース/コラボレーションを行ってきた彼は、初作以降の2年半で目覚ましい成長を遂げた。

 「去年出した『ABS+STUTS』ではミュージシャンによる演奏を再構築して曲を作ったり、星野源さんの“THE SHOWER”(2018年のシングル“ドラえもん”収録)などではMPCプレイヤーとしてバンドに混ざってセッションから曲を作ったり。ヒップホップが軸であることは今までと変わらないんですけど、以前とは大きく異なる曲作りのアプローチを学んだことで、音楽の作り方、その幅は劇的に広がりました」。