©Sisi Cecylia
Photo:from left Hiroki Chiba, Hiroshi Minami, Hiroshi Tsuboi, below Tomasz D browski.

ジャズピアニスト南博が自らのユニットを率いて参加

 トランペット奏者のトーマス・ダブロウスキー(トマシュ・ドンブロフスキ)が、ピアノに南博、ベースに千葉広樹、ドラムに坪井洋を迎えたライヴを2年ほど前に観る機会があった。今年3月にポーランドで録音されたこの『ninjazz』と同じメンバーだ。何の予備情報もないまま、演奏に接した。ダブロウスキーはポーランド出身でデンマークのコペンハーゲンを活動基盤とする。彼が南らと繰り広げた演奏は、ちょっとした間の作り出し方や楽器の重ね方が実に絶妙で、まるで長年一緒にやってきたかのようだった。

TOMASZ DABROWSKI.AD HOC,南博 Ninjazz Fortune(2018)

 ダブロウスキーがデンマークのプレイヤーたちと組んだFree4Artsというカルテットによるアルバム『Six Months & Ten Drops』がある。バリトンサックスがいる重心の低いサウンドで、時にフリーな展開にもなるが、やはり間の作り出し方が巧みだ。それがアンサンブルの妙を生んでもいる。そして、『ninjazz』ではまた違う空間性とタイム感がもたらされる。それを担っているのは日本側のプレイヤーだ。楽曲の大半はダブロウスキーの作曲で、Free4Artsがそうであったように、ダイナミックなグルーヴを軸にした曲もあれば、即興的な演奏から成り立っていると思われる曲もある。ただ、南ら3人が作る演奏空間はダブロウスキーを違うところに導いていく。

 タイショーン・ソーリーやクリス・デイヴィスといったニューヨークの先鋭的なプレイヤーたちとも演奏してきたダブロウスキーが、いまもデンマークに留まり、『ninjazz』を録音した事実は我々にとっても意味深い。そして、ベースと共にエレクトロニクスの使用にも長ける千葉と、長年海外で活動を続けヨーロッパのジャズの現場も知る坪井を選び、ダブロウスキーとの接触を図った南博の嗅覚は鋭い。『ninjazz』は、グローバル化したジャズという言語を、何処でどう操るのか。そのことに意識的であるがゆえに作り上げることができたアルバムでもある。