生誕100年を祝して、各社からこれぞテッパン! 入門アイテムからレアものまでが続々リリース!
アメリカ出身で初めて世界的な成功を収めた大指揮者、レナード・バーンスタインが今年生誕100年を迎え、彼の音源を保有するレコード会社各社は次々に記念CDやDVDをリリースしている。このこと自体は、他のアーティストも同様だが、バーンスタインの場合は録音量自体が膨大であり、かつ作曲家として交響曲やミサ曲、ミュージカルなどを残しており、彼の作品を現役のアーティストが新録音してリリースされるものも多く、バーンスタインのクラシック・アーティストとしては破格の幅の広さと奥行きの深さに改めて驚かされたのである。
こうしたスケールの大きさを手軽に体感できるのが『ウェスト・サイド・ストーリー~バーンスタイン超定番ベストPREMIUM』という2枚組である 。自作自演のミュージカルの聴きどころや、弾き語りの自作ブルース(!)、そしてモーツァルトからコープランドに及ぶクラシック名曲が凝縮されている。オヤマダアツシ氏の解説文も親しみやすく、マルチ・タレント・バーンスタイン入門に最高の一組だ。
次に指揮者バーンスタインに焦点を当てよう。ソニーから8月22日に発売される〈バーンスタイン名盤1000〉は1950~70年代の彼のオリジナル・アルバム50タイトル(2など)を廉価盤で復活するもの。ユニバーサルから7月4日発売済の〈バーンスタイン名盤UHQCDシリーズ〉は70~80年代の50タイトルを高品質CDで蘇らせている。これと同時発売の 〈バーンスタインDVD名盤選〉(24タイトル)では、彼のエネルギッシュな指揮姿を楽しむことができ、とくに『バーンスタイン・コンダクツ・バーンスタイン』の1本は超オススメである。今年、彼の作品の中で最も演奏会で取り上げられている交響曲第2番《不安の時代》が作曲家自身と名手ツィメルマンの演奏で入っているほか、バーンスタインが生涯を自ら語る58分のドキュメンタリー(字幕あり)がボーナス収録されているからだ。
初CD化のライヴ音源を含む輸入盤BOX『パリのアメリカ人』7枚組も見逃せない。フランス国立管弦楽団との有名なセッション録音に加え、75年と79年のライヴ音源とリハーサル風景がINAのアーカイヴから初収録されている。
初登場の映像では、81年にバイエルン放送交響楽団と行ったワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》演奏会形式上演の映像が素晴らしい。バーンスタインはユダヤ人だったが、ヒットラーがワーグナーに心酔していたことに関係なく、この作品を「音楽の歴史における中心的な存在。車輪の心棒」と評し、若い頃から魅了されていた。演奏、録音とも素晴らしく、日本語字幕もつく。
作曲家バーンスタインを、彼の後輩アーティストたちが演じたものではワーナーの『20世紀感動派~バーンスタインの音楽』3枚組がお買い得! ラトル、プレヴィン、ヤルヴィの名演に加え、愛弟子の佐渡裕による《カディッシュ》の音源も入っている。
《ウエスト・サイド・ストーリー》《オン・ザ・タウン》などで成功を収めた「ミュージカル作曲家」バーンスタインを聴くなら、95年にノンサッチが録音した『バーンスタインのニューヨーク』が最高。スター歌手を集め、歌だけでなくバレエ・シーンも収め、本場ブロードウェイの舞台を彷彿とさせる。
最後に教育者バーンスタインを取り上げたい。若い指揮者やアマチュア・オーケストラの指導のほか、テレビ音楽番組の司会者として大衆にクラシック音楽の楽しさ、美しさを語りかけた彼。ここでは1973年秋に母校ハーバード大学で6回の音楽講座をもった際の録音 『Leonard Bernstein at Harvard』13枚組をご紹介。モーツァルトからストラヴィンスキーまでの9曲を、ピアノを弾きながら英語で解説。聴き手に新しい鑑賞の視点を与え、講義後にはバーンスタイン指揮による同曲演奏が説得力をもって鳴り響く。輸入盤なので対訳は無いが、英語が得意の方にはまたとないプレゼントだ。