指揮者であり作曲家、ピアニスト、教育者として不滅の名を刻むバーンスタインが音楽家としての(崇敬を込めてこう言い換えたい、一人の人間としての)人生を投影した作品が、2021年9月8日で初演50年の節目。演奏機会は少ないながらも、意志ある音楽家たちが精魂を傾けて上演・録音を重ねてきた。その寄る辺となるのがレニー自ら刻んだ当盤だ。幾重にも内包された挑戦的なコンセプト。混沌の中から光の筋を示す“シンプル・ソング”と“全能の父よ”が核心を成す。異なるものの共存と融合。理想と現実との相克と苦悩。これらの音楽的体現への真摯な冒険である作品の射程は、時代が長ずるにつれ、より深みを増す。