Page 2 / 4 1ページ目から読む

pinoko
ダウナーでキュートな無二の存在感を放つ唯一の女性アーティスト

 甘くも気怠くも変化する声、複雑に揺らぐ感情を落とし込んだリリック、濃密な夜の空気を封じ込めたサウンド——ラップと歌の両刀使いで都市生活者の焦燥と消失感を形にするpinokoの初ミニ・アルバム『Hotel』は、レーベル初の全国流通作品という門出を飾るに相応しい逸品だ。

pinoko Hotel Chilly Source(2018)

 これまで多数のイヴェントに出演し、昨年は話題のharuru犬love dog天使も参加した自主制作EP『WING NOTE』を届けている彼女。同年には、MCネームの縁もあってか初音ミクによる手塚治虫×冨田勲楽曲のカヴァー集『初音ミク Sings “手塚治虫と冨田勲の音楽を生演奏で”』のポエトリー曲に詞を提供、この夏には初音ミクとの共演曲として“NEWDAYS”(トラックはMichitaが提供)を制作するなど活動の幅を広げている。

 人間の情と欲が集まる象徴としての〈ホテル〉をタイトルに冠した本作では、生々しい色恋の物語を通して、人との繋がりや生きることに対する根源的な問いかけを提示。sugarloaf製のメロウ・アーバンなトラックに愛への飢餓を絡ませる“INSEPARABLE”、タイトに転がるフロウの加速感が儚さを増幅させる“たばこ”、〈すべてを忘れ去りたい〉という言葉が棘のように刺さる“after pills”など、心地良いチルだけを期待して聴くと不意に心を抉られる可能性大。だが、このディープな耳触りにあなたもきっと耽溺するはずだ。 *北野

pinokoが参加した作品。