アコースティック・クァルテットのライヴで、スティーヴ・ガッドと26年ぶりの共演!

 「今回は、すべてがいい方向に向きましたね」

 渡辺貞夫がそう語る彼の新作は、そのタイトルが示すとおり今年8月に行われたブルーノート東京公演のライヴ・アルバムである。

 「一発勝負だし、ライヴは好きですね。スタジオ・レコーディングとはまったく別物です。まあ、スタジオ・レコーディングでも僕は録り直すということは滅多にしませんが、なんか録り直しができるという保険があるだけでちょっと違うんですよ」

渡辺貞夫 SADAO 2019 ライヴ・アット・ブルーノート・トーキョー Victor Entertainment(2019)

 ワン・ホーンのカルテットによる今ライヴ盤のポイントは、その顔ぶれにある。ピアノのラッセル・フェランテ(イエロージャケッツ)に加え、ダブル・ベースがジョン・パティトゥッチで、ドラマーがスティーヴ・ガッドと来た。過去、そのリズム隊の二人が渡辺作品に別々に参加したことはあったものの、お手合わせするのは久しぶり。くわえて、実はこの二人がコンビを組んでレコーディングしたものが本当に少ない。彼がブルーノート東京の帯公演をやる期間、二人のスケジュールがたまたま空いおり、今回それが実現した。

 異例の、でも誰もが妄想を膨らませたくなる敏腕リズム・セクションを起用できたことについて、渡辺貞夫は「うれしい出会いでした。一緒に演奏していて、本当に楽しかったです」とニコリ。そして、「彼らも、そう思ったんじゃないですか。ステージで二人が同じグルーヴで頭を振りながら一緒にやっていたんですけど、あれは本当にうれしいシーンでしたね」と、そのステージを振り返る。

 「リハーサルの際、スティーヴはブラシ・ワークの曲が多かったんです。でも、本番になるとスティック・ワークが多くなるんじゃないかと思っていたら、とんでもない(笑い)。最初の日の1曲めからブラシで始まり、それが逆にすごい新鮮でした」とは、彼のスティーヴ・ガッド評だ。一方、「ジョンは、ジャズを始めた時の気分に戻って演奏したと言っていましたね。彼、ソロのフレーズの節々に懐かしいフレーズが出てきたりするんですよ。それで、昔はこんな音を聴いていたんだなと思わせられもしました」

 曲は渡辺貞夫の自作が中心で、スタンダートの《アイ・ソート・アバウト・ユー》やセロニアス・モンク曲《リズマニング》も収められた。その2曲はステージでテーマ部メロディをハプニング的に吹いたら、他の3人がついてきて自然発生的に披露された曲だ。

 「みんなの僕の曲に対するアプローチが非常に新鮮でした。それらは僕が日本のミュージシャンたちともよくやっている曲なんだけど、それが新しく、フレッシュに変化したという歓びがありますね」

 


LIVE INFORMATION

渡辺貞夫クリスマスコンサート SADAO WATANABE Down East
○12/10 (火)Billboard Live OSAKA
○12/12 (木)札幌文化芸術劇場 hitaru
○12/14 (土)横浜関内ホール

SHISEIDO presents Christmas Gift vol.27 SADAO WATANABE Down East
○12/15 (日)Bunkamura オーチャードホール(渋谷)
【出演】渡辺貞夫(sax)ラッセル・フェランテ(p)養父貴(g)ベン・ウィリアムス(b)ピーター・アースキン(ds)

www.sadao.com