日本の皆さん、準備はOK? 野望多きヒップホップ・ヤンキーが、ブランニューなスタイルを携えてメジャーに殴り込み! 喜びも痛みも快感も刻んだ弾丸をブッ放す!
外にブッ放すけど自分もブッ飛ぶ
R-RATEDからのCDデビュー以来、人気/セールス面はもちろん、各種メディアの年間ベストを賑わせるなど名実共に日本語ラップ・シーンの顔となったANARCHY。「アクション起こすのが好きで、R-RATEDの10年でもずっとアクションを起こしてきたつもり。みんなと同じこともしたくない」――みずからそう語る動きの一端は、US最大手のミックステープ配信サイト〈DatPiff〉を通じた、人気アーティストとして日本では類を見ないフリー・ダウンロード・アルバム『DGKA (DIRTY GHETTO KING ANARCHY)』(2013年)の発表という形でも記憶に新しい。その彼が、初リリースから約10年越しでついにメジャー・デビューという新たなアクションに打って出た。メジャー進出はこれまで考えもしなかったというが、新たなスタイルと合わせた斬新な動きに続く一歩として、いまのタイミングはベストなのかもしれない。新レーベルのCLOUD 9 CLiQUEから発表されるニュー・アルバム『NEW YANKEE』では、「昔より伝えたいことが増えた」という彼の〈いま〉が表現されている。タイトルの〈YANKEE〉は、俗に言う不良の〈ヤンキー〉のことだ。
「ジャケットは外にブッ放してるけど、自分もブッ飛ぶっていうイメージ。(ヤンキーは)自分の根っこにあるものでもあると思ったし、そういう精神をフツフツとさせてる若い子もいっぱいいるし、先輩の人たちでも枠の中に収まっちゃってる人たちが日本にはいっぱいいるから、そういう何かを壊せたらなっていうメッセージをアルバムとかジャケットに込めました」。
みずからの生い立ち込みでハングリーさを強く滲ませた従来のハードコアなラッパー像に、遊びの要素を大きく採り込んだ『DGKA』は、彼の新たな面を引き出す作品だった。今回の『NEW YANKEE』は言うまでもなくそれに続くものとしてある。〈楽しまなきゃ意味ない/楽しめなきゃ意味ない〉と歌う“The Theme”に始まり、ダブステップ的なアレンジを含む“Energy Drink”(『DGKA』からの再収録)や、HABANERO POSSEが制作したムーンバートンのりのアッパーなサマー・チューン“Shake Dat Ass”(AISHAがラップで参加)が並ぶアルバム序盤は、以前の彼には考えられなかったものだろう。
「ノリだけの曲は苦手やったんですけど、『DGKA』でいままでの俺を壊せた。ヒップホップってそういう楽しみ方とかカッコ良さが含まれてると思うんで、その部分もラッパーとして表現したかった」。