豪華な参加アーティスト陣を媒介にして扉を開けると、そこにはドープなダンス・ミュージックの海が広がっていた――期待のプロジェクトが待望のアルバムでついに見つけたポップの境地とは?

新しい価値を創造する

 EXILE HIRO、DJ MAKIDAI 、VERBAL、DJ DARUMAからなるクリエイティヴ・ユニット、PKCZ®。結成は2014年で、これまでフェスやイヴェントのプロデュースと出演を中心に活動してきた。また今年6月には〈Ultra Singapore〉に出演し、さらに7月には世界最大級のEDMフェス〈Tomorrowland〉に出演するなど、海外での活動も着々と重ねている。並行してLDHアーティストの曲を中心に、楽曲制作やリミックス・ワークも数多く行ってきた。そんなPKCZ®がついにファースト・アルバム『360°ChamberZ』を世に放つ。アルバム発表の経緯について、DJ MAKIDAIはこう話す。

 「グループとしてデビューしつつも、楽曲はリリースせずにイヴェントを中心にやっていくというのはあまりないパターンで、おかげでいろんなトライをさせてもらえました。とはいえやっぱり楽曲としてきちんと形に残さないと伝わらないことも多いですし、曲を聴いてもらい、MVにも触れてもらったりすることで、海外を含めていろいろな方と繋がるチャンスも増えると思います。そこで僕らがいままでやってきた活動の集大成的なアルバムを作ろうということになりました」(DJ MAKIDAI)。

 『360°ChamberZ』の参加アーティスト陣を見てみると、メソッド・マン(ウータン・クラン)、アフロジャック、MIGHTY CROWNという国内外のレジェンドから、EXILE THE SECOND、三代目J Soul Brothers、GENERATIONS、ANARCHY、Crystal KayといったPKCZ®と距離の近い人気アーティストまで、まずはその豪華さが目を惹く。しかしいざ曲を聴いてみると、それ以上に耳を惹くものがあった。トラックの多彩さと、中毒性だ。

 「今作にはヒップホップの態度や、テクノ、ハウス、EDMのサウンドがふんだんに盛り込まれています。とはいえ直接的なクラブ・ミュージックを作ったという気持ちはなくて、クラブの要素をきちんと入れ込みつつも、いかに皆さんが共感できるものにするかというバランス感が肝だと捉えていました。結果として、ダンス・ミュージックでありながらポップスとしても機能するという、良いバランスの落としどころになったんじゃないかと思います」(DJ DARUMA)。

 メンバーがルーツとする90sヒップホップやラップ・ミュージック、R&Bをベースとしながら、彼らが今日までに体感してきたクラブの現場の空気感も存分に取り込みつつ、いま第一線で活躍するアーティストをフロントに立ててアウトプットしたアルバム。それはPKCZ®が掲げる〈MIX the WORLD=ヒト・モノ・コトをミックスして新しい価値を創造する〉という理念にもピタリと一致する。

 「僕らが通ってきた音楽なり、カルチャーから本当にいいなと思うものを取り出してPKCZ®として形にしたらこうなりましたというアルバムです。だからラップも歌モノもあるし、音色も本当にいろいろで、これほど特定のジャンルで括れないアルバムも珍しいのかなと思います。僕らの共通の好みとして、割合は少しラップが多めになっています」(DJ MAKIDAI)。

PKCZ® 360°ChamberZ LDH MUSIC(2017)

 

全方位型のポップ・アルバム

 なかでもR&B/ヒップホップやダンス・ミュージックの濃度が高いのが、タイトで壮大なスケールのEDMチューン“Cult of Personality”、ネプチューンズ・サウンド的な情感のR&B曲“Beauty Mark”、破壊力抜群のトラップ・チューン“T-REX”、トゥワーク/ムーンバートン的な曲調が癖になる“BED ROOM”といったあたりだ。もちろん前述した通り、豪華な参加アーティスト陣もこのアルバムの大きな魅力。なかでもその名を見て〈ホントに!?〉と二度見してしまうのが“INTO THE CIRCLE”に参加したメソッド・マンだ。

 「ウータン・クランは僕らが大きな影響を受けたグループで、なかでもメソッド・マンは大好きなラッパーです」(DJ MAKIDAI)。

 「ウータン・クランには『Enter The Wu-Tang(36 Chambers)』というアルバムがあるんですが、彼らはそれをカンフー映画『少林寺三十六房』からサンプリングしていて、僕らとしても〈Chambers〉という単語にはすごく思い入れがあります。実は今回のアルバム・タイトルも、ひいてはPKCZ=Primal Knowledge ChamberZというグループ名も、ここからインスパイアを受けていたりします。メソッド・マンに参加してもらえると聞いた時は、リアルに泣きそうになりました(笑)」(DJ DARUMA)。

 そして客演陣に関してのもう1つの大きな聴きどころが、EXILE THE SECOND、三代目J Soul Brothers、GENERATIONSといったLDHの人気アーティストの、〈普段とは違う顔〉が見られるところ。VERBALはこう語る。

 「LDHアーティストの皆さんにとっての〈こんなことをやってみたい〉というのを、PKCZ®のプラットフォームを通してやっていただけたのかなと思います。CRAZYBOYも、登坂(広臣)くんも、SHOKICHI(EXILE SHOKICHI)くんも、このアルバムでは普段とは違うラップや声質や歌い方をしていたりするので、ぜひ彼らの普段聴けないようなパフォーマンスをチェックし、新たな可能性を感じていただきたいです」(VERBAL)。

 そんな聴きどころ満載の当アルバム。タイトルに〈360°〉とある通り、クラブ・サウンドを愛する者から、クラブ・サウンドにそれほど馴染みのないポップス好きまでを〈全方位的〉に受け入れる稀有な作品となっている。

 「3人が経てきたいろいろなキャリアを踏まえたうえで、〈PKCZ®ならではのポップ〉を編み出す。それが僕らの大きなテーマでしたが、このアルバムにはそれが凝縮されています。PKCZ®結成からずっと模索してきたものが、これで見つかったのかなとも思っています」(VERBAL)。

PKCZのリミックスや参加曲を収めた作品を一部紹介。