COLUMN

映画「愛唄 ─約束のナクヒト─」 GReeeeNが脚本を手がけた、名曲〈愛唄〉のもう一つの物語

©2018「愛唄」製作委員会

 

GReeeeNが脚本を手がけた名曲《愛唄》のもう一つの物語

 まだまだ未完成であり、つねに未知の可能性を秘めているのだと、GReeeeNのグループ名にはそんな意味合いが込められているとどこかで聞いたことがあるが、いつだって変わりなく魅惑的な青さを浮かべた彼らの楽曲を聴くたびに、信念が首尾一貫しているなぁと思わざるを得なかったりする。そんな色彩を帯びたGReeeeNのサウンドは澄んだ空気の流れる青春映画とよく調和する事実をいまなら誰だって知っていることだろう。たぶん多くの人の印象に強く残っているのは、2017年公開作『キセキ ーあの日のソビトー』じゃないか。GReeeeNというヴォーカルグループならびに名曲《キセキ》が誕生するまでの軌跡と奇跡を描いた本作は、音楽映画でありながらも普遍性の高い青春ドラマとして高い評価を受け、異例の大ヒットを記録。画面全体を瑞々しい色彩で染め上げていくGReeeeNエネルギーの効力をより広く知らしめる結果を生む。そんな機会がどうやらもう一度到来するようである。GReeeeN×映画コラボの第2弾となる『愛唄 ー約束のナクヒトー』がそれだ。

 表題に据えられているのは、2007年にリリースされた彼らのサード・シングルであり、《キセキ》と並ぶもうひとつの代表作に数えられるヒット・チューンのタイトルだが、彼らにとって初のラヴソングであるこの曲を、高純度のラヴ・ストーリーとして描き出そうというのが本作の出発点となっている。監督に起用されたのは『ひみつのアッコちゃん』や『海月姫』などを手がけ、青春恋愛モノに定評のある川村泰祐だ。注目したいのは、脚本のクレジットに清水匡と共にGReeeeNの名前があることだ。資料によれば、実話エピソードから着想を得たオリジナルのストーリーということだが、人生をどう生きるか、という問題を示唆するいのちの時計の存在を、歯科医でもある彼らが気づかせようとしている。そのことがたいへん興味深い。

©2018「愛唄」製作委員会

 主人公は、余命幾ばくもないことを医者から宣告されたトオル(〈キセキ~〉においてグリーンボーイズの一員であった横浜流星)。何事もおこらない普通のサラリーマン生活を送っていた彼はこの事態とどう向き合えば良いかわからず、やがてみずから命を投げ出すことを決意する。そのとき彼に向って投じられたひと粒の小石。そして彼を動かす何かの力が起動し、水面に波紋がゆっくりと広がっていくように物語は回りだしていく。ストーリーが徐々に浮かび上がらせていくのは、人生とはいくつものキセキで出来ている、というテーマだ。トオルの旧友であり、元ミュージシャンの龍也(飯島寛騎)との再会、主人公と彼に多大な影響を与えることとなる一冊の詩集の発見、その詩集と龍也とを結ぶ線、そして詩集の作者であり、長年闘病生活を送る伊藤凪(清原果那)の発見など、前半部分では運命の糸が手繰り寄せられるようにさまざまな出会いが積み重ねられていく。

 後半ではキセキの人と出会ってしまったトオルが人生のカウントダウンと向き合いながら運命を乗り越えていこうとする姿が丹念に描かれるのだが、脆くて儚い恋人たちのいまにも壊れそうな姿をどこまでも柔らかく画面に定着させていく点が見どころである。どうしていいかわからず不安定に揺れているけれど、止まると終わる、ということだけは漠然とわかっているナクヒト(涙するほど全力な人のこと)たちが、心から大事に思っているものすら壊してしまおうとも、力を振り絞って動き出すそうとするクライマックス。はたしてそこに本当のキセキは起こるのかどうか。

©2018「愛唄」製作委員会

 ドラマの中心を成す3人の若き役者たちはいずれもナクヒトとはどんな人間を指すのかをしっかりと体現しており、好感を持てる。特に注目したいのは天才詩人であるヒロインを演じた清原果那である。映画『3月のライオン 前編/後編』で見せた好演ぶりで多くの映画ファンに鮮やかな印象を残した彼女だが、ここでも無垢な色をまとった少女の役を熱演。無数の白いシーツが風にたなびく屋上シーンにおける佇まいには何とも言えない清廉さが香り立ち、思わずウットリさせられた。来年には山田孝之がプロデュースした映画『デイアンドナイト』の公開が控えており、次はどんな色と混ざって魅力的なキャラクターを作り出してくれるのか、いまから楽しみでならない。

 そんな主人公たちを取り巻く世界には、成海璃子、財前直見、富田靖子といった豪華な女優陣たちが配置され、安定感のある演技で物語を豊かに彩っていく。ひときわ光っているのが特別出演となる中山美穂の存在で、酸いも甘いも嚙み分けた大女優の役を自然と演じ切り、画面を引き締める役割を担っている。

 さてスクリーンのなかでよみがえった《愛唄》はいったいどのように響いているのだろう。やはりというべきか、いつもと変わりなく魅惑的な青さを浮かべていることは言うまでもないが、とにかく今回のGReeeeNは淡くて切ない、とだけ最後に言っておきたい。

 

「愛唄 ─約束のナクヒト─」
監督:川村泰祐
脚本:GReeeeNと清水匤
プロデューサー:小池賢太郎
音楽プロデューサー:JIN
音楽:GReeeeN
主題歌:GReeeeN「約束×No title」(ユニバーサル ミュージック)
出演:横浜流星/清原果耶/飯島寛騎 中村ゆり 野間口徹/成海璃子/中山美穂(特別出演) 清水菜月 二階堂智 渡部秀 西銘駿 奥野瑛太 富田靖子 財前直見
配給:東映(2017年 日本 127分) ⓒ2018「愛唄」製作委員会
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