Photo by YOSHIHIRO MORI

 

緩急を巧みに使い分け、ダイナミズム半端ない音の塊を組み立てていく小さな巨人。熱量と過激さを増した新作『Nice Body?』は2019年のMVP最有力だ!

ヘヴィーで強烈なサウンドを出したい

 振り返れば、2018年はドミコにとって大きな飛躍の一年だった。ライヴ・シーンでの活躍は特に目覚ましく、春にはジェットのジャパン・ツアーに帯同し、そのあとアメリカへ渡って〈SXSW〉出演と全米6か所のツアーへ。夏には国内フェスとツーマン・ツアーを成功させ、暮れには台湾での初ライヴと、初めてドミコに接するリスナーを片っ端からノックアウトしてみせた。

 「深い戦略とかはなくて、地道なことをやってるだけなんですけど、馴染みのないところに行くのはめちゃくちゃおもしろいです。アメリカもすごくおもしろかったし、日本にくらべて、ライヴがすごくシンプルに完結するなという印象はありましたね」(さかしたひかる、ヴォーカル/ギター、以下同)。

 さらに言うなら、新しい世代が日本のポップ・ミュージックのシーンを徐々に塗り替えてゆく、その潮流の先頭集団にドミコはいる。野外フェス〈BEACH TOMATO NOODLE〉を共催する盟友・Tempalayをはじめ、MONO NO AWARE、King Gnuなど注目の逸材たちとの親密な共演は、若い感性にフィットする音楽を求めてやまないリスナーのための、新しい部屋のドアを開けるキーのようなものだ。

 「僕らのまわりのバンドたちは、根本では何かが変わったり、どこかでスイッチが入ったりとかはないと思います。Tempalayとかも、音楽性で仲良くなったというよりは、もっと規模感の小さいところで呑み友達みたいな感じで始まった関係なんで。単純に、みんなかっこよかったからじゃないですかね? それがただ知られただけだと思います」。

 ドミコと言えば、ギター&ヴォーカルのさかしたとドラムスの長谷川啓太という最小限の編成ながら、膨大なエフェクターを駆使したディストーショナルなサウンド、ロックンロールのツボを押さえたシンプルかつダイナミックなギター・リフと、ドリーミーでポップなメロディーの組み合わせが最大の武器。2011年の結成から基本形は不変だが、インディー時代は宅録&セルフ・ミックス、2016年のファースト・フル・アルバム『soo coo?』で初めて本格的なスタジオ録音を試み、2017年の前作『hey hey,my my?』ではより解像度の高い音像にトライするなど、着実な進化を遂げて現在に至る。レコーディングとライヴの経験値を積み上げ、1年4か月ぶりに届いたサード・アルバム『Nice Body?』からほとばしるすさまじいエネルギーは、前作を上回る圧倒的なものだ。

ドミコ Nice Body? RED Project(2019)

 「漠然と、ヘヴィーで強烈なサウンドを出したいなというものはありました。制作期間がライヴと並行していて、そういう曲があったら楽しそうだなとうっすら思っていた、それが過激なサウンドを作るきっかけにはなってます。狙いがあったのはそこぐらいで、意識的に作るというよりは、無意識に作りはじめたものですね」。

 サウンドのヴァリエーションも、ぐっと広がった。トップを飾る“ペーパーロールスター”は、バンド史上最速の230bpmで突っ走る豪快なガレージ・ロック。さらにファンクとグランジが合体した“さらわれたい”、ダークなファンクとブルースが融け合う“裸の王様”など、アルバム前半はファンキーなうねりの強い曲を連ねてぐんぐん飛ばす。

 「“ペーパーロールスター”は、たぶんドミコの中で一番速いです。230bpmってどれぐらいだろう?と思って、興味本位で作り始めた曲ですね。“さらわれたい”は、この曲を作ってたときに住んでた部屋の壁が薄くて音が漏れちゃうから、デモは小声で歌ってるんですよ。その歌い方がグランジっぽい曲調に合っていて、カッコイイと思ったので。家の壁が薄かったからできた曲(笑)。“裸の王様”は、ライヴのリハーサルでリフを弾いて、カッコイイと思ってすぐヴォイスメモで録りました。リハーサルでの思いつくことは結構ありますね」。

 

奥行きを増していくサウンド

 中盤の白眉は“アーノルド・フランク&ブラウニー”。ワン・グルーヴのファンクなダンス・チューンが、後半に俄然スピード・アップしてゆく様は圧巻のひと言。あっけらかんと明るいカントリー・ポップ“マイ・ダーリン”であっと驚かせたあと、ラストはサイケデリックな夢幻のワルツ“ベッドルーム・シェイク・サマー”。なんというイマジネーション豊かな10曲だろう。

 「“アーノルド・フランク&ブラウニー”は、スリー・コードみたいな感じが延々続いて、サビは別のコードを乗せてるけど、ベースはずっとそこにいる、それで成り立ってるのがおもしろくて気に入ってますね。“マイ・ダーリン”は、キャロル・キングみたいなめちゃくちゃ王道なコードでイイ曲作れないかな?と思って作った曲。ドミコとしてはあんまりやってきてないタイプですけど、自分のなかにはもともとあるものですね。“ベッドルーム・シェイク・サマー”は、曲に入る前にウワ~ンって揺れてる音が入っていて、その音を出すエフェクターが使いたくて作りました。結成した頃はポスト・ロック、シューゲイザーを好んでやっていたので、今のちゃんとしたレコーディングであの時の音を落とし込んだらどうなるだろう?という、興味本位で始まった曲でもあります」。

 基本はシンプルなギター・ロックでありながら、ストレンジ・ポップな要素をたっぷりと塗した、ヒネくれたカッコ良さを装備したモダンなロックンロール。歌詞も意味よりは響きを重視するもので、良い意味でシュールで捉えどころがない。なんとも形容しがたい強烈な個性だが、創作のすべては無意識から始まると、さかしたは何度も繰り返す。

 「曲を作ってて、〇〇っぽいなと思ったらその瞬間にボツにします。だって絶対に自分のものじゃないから。イチから意識的に作ると、あんまり没頭できないというか、予想の範囲内のことだからおもしろくない。良いか悪いかは、僕が熱が入るかどうかが問題で、〈あー、カッコイイね!〉って言いながら作れるかどうかで変わってくるので、無意識のほうがいいなと思います。だからインタヴューで〈この曲ってあれに影響受けてますか?〉って始まると、〈いや、違って〉〈それも違って〉って、泥沼になる(笑)。何て言ったらいいんだろうなーっていつも思ってます」。

 音楽に込めた情熱とパワーとは裏腹に、淡々と飄々と語る口調が頼もしいような、何を考えてるのか見えずにちょっぴり怖いような。いまだ底の見えないポテンシャルを抱えて突っ走る、ドミコの2019年に引き続き最大限に注目したい。

 

ドミコのディスコグラフィーを振り返りながら、さかしたひかるの愛聴盤(2018~19年冬)をチェック!

ドミコ 深層快感ですか? kinoco(2014)

ポスト・パンク、サイケ、ガレージなどなどゴッタ煮になった全編をディストーショナルなサウンドが包む初の全国流通盤。「ピークがついてバリッと割れる嫌な音があるじゃないですか。逆にそれをうまく使おうかなっていうイカれた時期だったんです。振り返るとホント衝撃的な作品」。

 

THE ANDREW SISTERS The Best Of Anthology Master Classics(2006)

第二次大戦中、軍隊への慰問で人気を得た実姉妹のコーラス・グループ。兵士の活力源にもなった陽気でスウィンギーなメロディーもさることながら、「兵隊さんもいっしょに盛り上がれる言葉回しとか音の響かせ方がうまいなあって」ところがさかしたのツボ。

 

DARRELL BANKS The Best Of Darrell Banks Connoisseur(1969)

27歳でこの世を去った伝説のソウル・シンガー。数少ない音源のなかでもさかしたが感銘を受けたというのが“The Love Of My Woman”なる軽快なノーザン・ソウル・ナンバー。ドミコのサウンドに時折見え隠れするヴィンテージ感はこんなところにも通じていたり。

 

CAROLE KING Tapestry Ode/Columbia/A&M(1971)

70年代を代表するシンガー・ソングライターの名盤であり、時代を越えたポップス作品の金字塔。「何時間でも聴いていられますね。王道のメロディーなんだけど、〈ああ、キャロル・キングだなあ〉って思わせられる。〈シンガー・ソングライター〉っていう言葉がいちばんしっくりくる人」。

 

ドミコ DELIVERY SONGS kinoco(2015)

前作からわずか半年後にリリースされた2作目のミニ・アルバム。「バンド・サウンドに囚われないほうがいいかなあって、あえて打ち込みの曲もやってみたり。実験的というか、自分のなかではB面集的な感覚ですね。性質上、最近のライヴではやってない曲が多いですね」。

 

DARYL HALL & JOHN OATES Abandoned Luncheonette Atlantic(1973)

「“I'm Just A Kids”っていう曲を初めて聴いたとき、素晴らしい曲すぎてびっくりしました」ということでホール&オーツは完全に初期派のさかした。ドミコのサウンドにあるファンク成分は「ファンクっぽいことをやってるポップ・アーティスト経由」だそう。

 

SMOKY ROBINSON A Quiet Storm Motown(1975)

そのタイトルが〈メロウでソウルフルなサウンド〉を指す言葉にもなった歴史的な一枚。「好きなトラックメイカーがサンプリングしてて、偶然元ネタを聴いてから好きになったアルバム」。このスウィートな質感が、ドミコのサウンドのどこか隅っこに息づいているのだろう。

 

AC/DC Live Epic(1992)

90~91年に行われたワールド・ツアーをダイジェストで収録した、AC/DCの真髄ここにありの名実況盤。「ギターの音が信じられないぐらい暴力的なようでいてすごく綺麗なのがめっちゃくちゃイイ!」ということで、胸を熱くしながら圧巻のサウンドに身を委ねるさかしたの姿が目に浮かぶ。

 

ドミコ soo coo? RED project(2016)

ファンクやレゲエなど新たなリズム・アプローチにも挑んでみせた初のフル・アルバム。「このアルバムからレコーディング・スタジオで録るようになって。曲の感じも一気に変わったかな。ライヴもやるようになってきたのでバンド・サウンドを意識して作ったところはありますね」。

 

DINOSAUR Jr. Where You Been Blanco Y Negro(1993)

UKチャートで初のTOP10入りを果たした代表作。「90年代のロックってあんまり好んで聴いてはいないんですけど、『深層快感ですか?』以前に自主制作で出していた盤とかでは、シューゲイザーっぽいものとか、このへんの感じの音とかをやってましたね」。

 

PAVEMENT Crooked Rain, Crooked Rain Matador(1994)

「その当時は新しかったのかも知れないけど、シューゲイザーもだんだん聴けなくなってきたり、90年代のロックって長く聴けないものが多いなあって印象が僕にはあって」というなかでも、いまだに聴けるというのがダイナソーJrやペイヴメントなんだとか。

 

DIRTY PROJECTORS Dirty Projectors Domino(2017)

デイヴ・ロングストレスのソロ・プロジェクトとなっての初作は、R&Bへの接近を図るなど音楽性の幅を拡大。「1曲目の“Keep Your Name”っていうのがヴォーカルのピッチを変えてる曲で、そういったエフェクターでの実験精神みたいなところには影響受けてるかな?」。

 

ドミコ hey hey, my my? RED Project(2017)

2枚目のフル・アルバム。「スタジオでのレコーディングが熟れてきたこともあって、サウンドの振り幅とかを広げてみた感はありますね。(前作で)あれだけやれるんだったらもっとしっかりギターの音を鳴らして……って、ここでちゃんとフツーのバンドの音をやろうと思った(笑)」。

 

KHRUANGBIN Con Todo El Mundo Night Time Stories(2018)

3月には初来日公演も予定されているヒューストン出身の3ピース・インスト・バンド。60年代のアジアン・ポップやタイ・ファンクからの影響も受けているというサウンドはエキゾチックで、あえてチープに仕立てている感じがニクい!……と。

 

AAAMYYY BODY SPACE SHOWER(2019)

『Nice Body?』と同日リリースのファースト・ソロ。「ライヴを観に行って、そこでアルバムのタイトルを聞いたんですけど、ちょっと被ってるなあって(笑)。Tempalayとは仲良くて、ライヴもよく一緒にやるんですけど、前にもアルバムの中の曲名が似てたってことがあった」。