丁寧にポップスを構築した感のある前作を経てタガが外れたのか、多彩極まる楽曲が詰め込まれた3作目。80年代アイドルばりの“1999”にテクノ・ポップ愛が迸る“テレビジョン”、N.E.R.Dからディスコへと展開する“皇居ランナー“、人を喰ったカントリー“パタタス・フリータス”……自由な着想をシンプルに形にする楽しさと勢いが全編から感じ取れる。どう振る舞おうともキャッチーな仕上がりも流石。

 


〈バンドをやりたかった〉真部脩一が、盟友・西浦謙助と、歌はほぼ素人だった齋藤里菜を迎え、その他のメンバーを公募するというかたちでスタートした集団行動。初作『集団行動』ではまだ垢抜けなかった齋藤里菜も、セカンド『充分未来』で表現力が大きく飛躍。個人的には2018年の名盤のうちのひとつになったと思う。『充分未来』リリース後にはベーシストのミッチーが正式加入。真部が〈やりたかった〉バンドのかたちがようやく整っての本作だが、本作ではその〈やりたかった〉バンド音楽をさらに超えるような、文字通りスーパーな音楽が出来上がった。そのひとつの要因は、齋藤里菜のさらなる進化だろう。もう誰かの二番煎じではないオリジナルの歌声と表現力を手に入れた齋藤。いまの彼女はバンドを食ってるくらいのフロントウーマンに成長した。

もうひとつの要因は、真部楽曲のこれまで以上に多彩なジャンル。子供番組の音楽のような楽曲から、ディスコ風、ダークなロック、ビッグバンド風など、〈それどこから持って来たの?〉なアレンジもあるのに、いずれもポップスとしてキレイに昇華している。特に、シンプルな転調が気持ちいい冒頭の“SUPER MUSIC”と、民族的なリズムから壮大なスケールが展開していくラストの“チグリス・リバー”にはヤラれた。19歳の過去を思い出すと同時に99歳の未来を夢想する“1999”も、時代が移り変わろうとしているいまこの時に聴くと余計こみ上げるものがある。