かつてソングライター兼ベーシストとして相対性理論の要であった、真部脩一率いる新バンドのデビュー作。同じ古巣のドラマーを務めていた西浦謙助と、〈ミスiD2016〉ファイナリストの齋藤里菜をシンガーに据えての7曲入りだ。ずば抜けてポップで即効性の高い、少しオリエンタリズムを感じさせるメロディーと、それに映える齋藤の初々しい歌声が強烈に耳を惹く。恋愛の駆け引きを戦闘機のドッグ・ファイトになぞらえた“ホーミング・ユー”などの詞も、具体的な事物を描きながら抽象性を拡げるような妙技が真部らしい。楽器をギターに持ち替えた真部が、ポスト・パンク調やシューゲイザーにも通じるプレイでバンド・サウンドを尖らせながら、時にユーモラスな、時にメロウなシンセの音色も各曲に多彩な色を添えている。そんな彼らは現在、新メンバーを大々的に募集中で、今後は可変性がバンドの軸にもなり得るようだ。〈バンド〉という集団の在り方にも一石を投じてくれそうで目が離せない。