ブラジル音楽界の鬼才、エルメート・パスコアール&グループが5月13日(月)に東京・六本木のBillboard Live TOKYOで来日公演を行う。

クラムボンのヴォーカリスト/キーボーディストである原田郁子やシンガー・ソングライターの七尾旅人など、日本国内の音楽家たちからも愛されるパスコアール(原田は音楽評論家・柳樂光隆との対談でその魅力を語っている)。ジャズ界の王、マイルス・デイヴィスをして〈この惑星でもっとも重要なミュージシャン〉と言わしめ、マイルスの71年のライヴ・アルバム『Live-Evil』には演奏と作曲で参加、今日に至るまでユニヴァーサルな知名度とリスペクトを得ている巨人だ。

その独自の音楽性から、ブラジル音楽の文脈でもジャズの文脈でも決定的な評価をしづらいのがパスコアールという音楽家。彼の特徴としてよく言及されるのは、楽器以外のモノを使って音を出すことだ。例えば、先ほど挙げた原田と柳樂の対談では、〈豚をレコーディング現場に連れてきた〉〈(ライヴで)やかんを吹いていた〉〈コンクリートの塊に鉄パイプを落として音を出していた〉〈豚のおもちゃをバンドで鳴らしていた〉などなど、その奇天烈なパフォーマンスについて語られている。柳樂の言葉を借りれば、パスコアールというのは〈音楽じゃないものを音楽にできる人〉なのだ。

77年作『Slaves Mass』表題曲。パスコアールは豚の鳴き声を演奏に取り入れている。その〈演奏〉しているのは、ブラジル音楽界で名のあるパーカッショニストのアイアート・モレイラ
 

パスコアールは14歳からブラジルでプロのミュージシャンとして活動を始めたと言われており、先に書いたマイルスとの共演で国際的に知られるようになった。その後、70年代には『Slaves Mass』(77年)やモントルー・ジャズ・フェスティヴァルでの演奏を収めた『Ao Vivo Montreux Jazz Festival』(79年)といった傑作を連続して発表。唯一無二の謎めいたサウンドとともに、音楽家としての地位を確立していった。

※「ミュージック・マガジン」2019年5月号の〈ブラジル音楽オールタイム・ベスト・アルバム100〉では53位に選ばれている
 

そんなパスコアールはフランク・ザッパのような多作家としても知られており、2017年には『No Mundo Dos Sons』『Viajando Com O Som』(録音は76年)『Natureza Universal』と3作ものアルバムをリリースしている。各年代に多数のアルバムを残し、参加作品も数多いが、入門には『Slaves Mass』や『Ao Vivo Montreux Jazz Festival』あたりの70年代の作品がいいだろう。

エルメート・パスコアール&グループの2017年のライヴ映像。同年の東京・渋谷WWWでのパフォーマンスを捉えたもの
 

毎回ユニークなライヴ・パフォーマンスを繰り広げるエルメート・パスコアールだが、果たして今回の来日公演ではどんな演奏を聴かせてくれるのだろうか? まったく予想もつかないところではあるものの、きっとさまざまな楽器と楽器でないモノを駆使して、音楽と〈非音楽〉の間を自由に行き来するステージを観せてくれるはず。御年82歳にしてなお現役の偉大な音楽家の姿を、ぜひBillboard Liveという親密な空間で間近に目撃してほしい。

 


LIVE INFORMATION
エルメート・パスコアール&グループ
Hermeto Pascoal e Grupo

2019年5月13日(月)Billboard Live TOKYO
1stステージ 開場17:30/開演18:30
2ndステージ 開場20:30/開演21:30
サービスエリア 8,900円/カジュアルエリア 7,900円(1ドリンク付き)
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