トランペット奏者としてジャズの概念を解体/再構築し続けるシオ・クローカーが、ビルボードライブに初登場する。2025年8月4日(月)に大阪、8月5日(火)に東京で行われる今回の来日公演では、今年6月にリリースしたばかりのニューアルバム『Dream Manifest』をメインとした最新セットが披露されるようだ。
1920年代、ジャズの黎明期から長きにわたり活躍したトランペッターのドク・チータムを祖父に持つシオは、盟友カッサ・オーバーオールらと共に現代のジャズシーンをリードする存在だ。
2006年、20歳になったシオのデビューアルバム『The Fundamentals』はオールドスタンダードのカバーなどを一切挟まず、全編オリジナル曲で構成されていた。そんな先進的な内容とは裏腹に、彼が書き下ろした楽曲からはロイ・ハーグローヴやチェット・ベイカー、ディジー・ガレスピーといった先人達と同様、タイムレスでオーガニックな香りが漂っている。
デビュー後、シオはアメリカから中国へとわたり、上海のジャズクラブやホテルなどでその腕を磨いたそうだが、過去のインタビューによればこの当時はかなり忙しなく活動していたという。そうした特異な環境で育んだ感性は、ディー・ディー・ブリッジウォーターとの邂逅から生まれた3rdアルバム『Afro Physicist』(2014年)で本格的に開花。同作ではディー・ディーのほかロイ・ハーグローヴやステフォン・ハリス、カリーム・リギンスとの共演も実現した。
2000年代以降のジャズシーンといえば、ノラ・ジョーンズのようにポップサイドにも大きく受け入れられたスターが誕生したのと同時に、ロバート・グラスパーを筆頭に今に続くヒップホップとの新たな共振がはじまった時代でもある。シオも自身のオリジナル作品を制作しながら、コモン『Black America Again』(2016年)、J・コール『4 Your Eyez Only』(2017年)といったその年を象徴する名作に次々と参加。マンネリズムを嫌い、常に革新的なシンガーやプレイヤーと鎬を削ってきた祖父と同じように、シオもまた世代やジャンルにとらわれることなく邁進していく。
2019年にリリースした5thアルバム『Star People Nation』はグラミー賞のベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム部門にノミネートされた。これまで以上にリズムの緩急とメロディーの奥行きが増し、ブルースやラテンのエッセンスも盛り込んだ意欲作は、グラミーのノミネートも追い風にシオの名を世界へと轟かせた。
続く6作目『BLK2LIFE II A FUTURE PAST』(2021年)にはカッサ・オーヴァーオール、ワイクリフ・ジョン、ゲイリー・バーツといった多彩なゲストが参加。R&Bやファンクの養分も注ぎ込んだ同作は、当時コロナ禍で沈んでいた人たちを再びダンスフロアへと呼び戻すような陽気に満ちていた。
そして、ジル・スコットらが参加した前作『LOVE QUANTUM』(2022年)を経て届けられた最新のリーダー作が、冒頭でも少し触れた『Dream Manifest』だ。今年デビューアルバムをドロップしたジャズシンガーのタイリーク・マクドールをフィーチャーした“64 Joints”はライブでのスリリングなセッションを想起させ、ドゥロー(D’LEAU)とのクラブチューン“We Still Wanna Dance”ではサンプラーを導入するなど、作曲面やアレンジ面でも新たな挑戦が伺える。来日公演までに聴き込んでおきたい作品だが、それを抜きにしてもジャズリスナーだけでなくダンス/クラブミュージック好きにも響く一作なので、ぜひこの機会にチェックしてみてほしい。
7月24日の英BBCのイベント出演を終えてから日本へとやってくるシオ・クローカー。そのイベントを除けば、今回のビルボードライブ公演は『Dream Manifest』を引っ提げたツアーの開幕を告げる記念すべきステージとなるだろう。2025年の夏、シオの奏でる至高の音色をぜひ直接浴びてもらいたい。
LIVE INFORMATION
Theo Croker
シオ・クローカー
2025年8月4日(月)ビルボードライブ大阪
1stステージ
開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ
開場/開演:19:30/20:30
https://www.billboard-live.com/osaka/show?event_id=ev-20735
2025年8月5日(火)ビルボードライブ東京
1stステージ
開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ
開場/開演:19:30/20:30
https://www.billboard-live.com/tokyo/show?event_id=ev-20734
■チケット料金 ※飲食代金別
【大阪公演】
BOXシート:20,100円(ペア販売)
S指定席:9,500円
R指定席:8,400円
カジュアル:7,900円(1ドリンク付)
【東京公演】
DXシート DUO:21,200円(ペア販売)
DUOシート:20,100円(ペア販売)
DXシート カウンター:10,600円
S指定席:9,500円
R指定席:8,400円
カジュアル:7,900円(1ドリンク付)
※本公演はClub BBL会員、および一般販売をWEB受付のみ実施いたします
※法人会員は電話にてご予約承ります
■メンバー
シオ・クローカー(バンドリーダー/トランペット)
エリック・ウィーラー(ベース)
イドリス・フレデリック(キーボード)
ミゲル・ラッセル(ドラムス)