
『My Songs』収録曲はもう〈みんなの歌〉になってる!
1. Brand New Day(1999)
表題通りのポジティヴな昂揚感が漲るナンバーで、スティーヴィー・ワンダーのハーモニカで始まるオリジナルは同名アルバムからの先行シングルとして全英13位を記録した。数あるカヴァーでは、テルマ・ヒューストンが2007年作『A Woman's Touch』(Shout! Factory)で聴かせたゴスペル解釈のソウルフルな快唱が聴きもの。
2. Desert Rose(1999)
こちらも『Brand New Day』収録曲で、オリジナルにはスティングも〈世界でもっとも美しい声の持ち主〉と賞賛したライ歌手のシェブ・マミを迎え、ライが人気のフランスなどで特にヒットした。アルジェリアのライ音楽とラテンやヒップホップを融合して人気を博したシェブは、2006年作『Layali』(Virgin France)以降はいろいろあってリリースが止まったままだが……。
3. If You Love Somebody Set Them Free(1985)
『The Dream Of The Blue Turtles』から全米3位を獲得したソロ転向後の初ヒットで、今回のスティングはジャズ色をハウス風に置き換えて演奏している。その着想になっていそうなのがケニー・ボビアンによるゴスペル・ハウス解釈の“Set Them Free”(99年)で、『Cielo -Cinco』(Tommy Boy)のようなミックスCDでは重宝されてきた一曲だ。
4. Every Breath You Take(1983)
『Synchronicity』から英米で1位を記録したポリス屈指の名曲で、スティングも『...All This Time』に収めるなど現在もライヴには欠かせないナンバー。当然レゲエからジャズ、EDMまでカヴァーも数多いが、最大のインパクトはパフ・ダディが印象的なループを丸使いした『No Way Out』(Bad Boy)収録の“I'll Be Missing You”で、そちらも全米1位を獲得した。
5. Demolition Man(1981)
スティングがグレイス・ジョーンズの81年作『Nightclubbing』(Island)に提供したレゲエ調の曲が初出で、ポリスの同年作『Ghost In The Machine』にてロック・アレンジで披露されたもの。93年には映画「デモリッションマン」用にスティングが再録したり、以降もレイヴン&シャギーが歌ったり、何かと引っ張りだこの曲だ。
6. Can't Stand Losing You(1978)
ポリスのデビュー作『Outlandos D'Amour』に収録されたシングル曲で、当時は自殺を主題にした詞の内容で物議を醸したという一曲。フィーダーやRXバンディッツのパンキッシュなカヴァーやミーカ&アーマンド・ヴァン・ヘルデンのダンス調も良いが、ジャズ系のコンピ『Reggata De Lounge: Tribute To The Police』(Music Brokers)で聴けるラウンジーな解釈も孤独感をそそる。
7. Fields Of Gold(1993)
オリジナルは『Ten Summoner's Tales』から全英16位を記録したソフトな一曲で、翌年のベスト盤の表題に起用するなどスティング自身も特に気に入っている模様。エヴァ・キャシディやフォープレイ、ケイティ・メルーアのカヴァーも知られるが、マイケル・ボルトンがそのエヴァを迎えた『Gems: The Duets Collection』(Legacy)でのデュエットがいい感じ。
8. So Lonely(1978)
ポリスのデビュー作『Outlandos D'Amour』に収録されたシングル曲で、レゲエを採り入れつつ倍速のフックで感情を爆発させるナンバーのひとつ。アスワドやグレゴリー・アイザックが直球のレゲエ・カヴァーを披露していたほか、フランスのヌーヴェル・ヴァーグは2009年作『3』(Peacefrog)にてボッサ解釈を聴かせている。
9. Shape Of My Heart(1993)
『Ten Summoner's Tales』所収の哀愁を湛えた名品で、翌年の映画「レオン」でも使われたが、ナズの“The Message”(96年)でネタ使いされて以降は膨大なサンプリングによって急速に定番化。なかでもスティング本人を招いたクレイグ・デヴィッドの“Rise & Fall”(2002年)は全英2位、『Goodbye & Good Riddance』(Interscope)所収のジュースWRLD“Lucid Dreams(Forget Me)”(2017年)は全米2位という大ヒットに。