デビュー50周年でバッハの大作に挑む
デビュー50周年を迎えたギタリストの荘村清志がJ.S.バッハを中心とするアルバムをリリースした。
「バッハの作品というのはギタリストの資質を試す作品だと思います。一音一音の連なりから構成される作品ですから、演奏家が自分自身の中にそこから感じるものをたくさん持っていないと演奏できない。一音一音に思いを込めて弾いていかなければいけない作品で、それだけ演奏家の内面がクローズアップされる作品だと思います」
と荘村は語る。今回のアルバムではバッハの《シャコンヌ》《リュート組曲第1番》《無伴奏チェロ組曲第6番》が取り上げられ、そこにシューベルトの《セレナーデ(メルツ編曲)》など3曲が加わる。《シャコンヌ》は自身で編曲を手がけた。
「基本はヴァイオリンのオリジナルに忠実に、必要最小限の和音を加えています。単旋律の良さを出すこと、そして演奏では自分で感じた間を大事にしました。セオリー通りにきちっと演奏する、大きな音を出すだけではダメで、より自由に自分の感じたものを出す、そういう演奏を目指しました」
《シャコンヌ》はデビューのリサイタルでも演奏した曲だった。
「スペインから帰国して1年後に東京でリサイタルを開いたのですが、技術的には満足できても、表現の上では物足りないものを感じたコンサートでした。それ以降、少しギターを離れて、友達と飲みに行ったり、本を読んだり、映画を観たりと、ギターに注ぐ時間を減らしたりしました」
さらにはギターの演奏方法も試行錯誤を重ねた。
「40代半ばに指が動きにくくなった。それで5年ぐらいかけて奏法を見直しました。脱力して、無駄な力を省くということ。それがひとつの転換期で、50代になってから、ようやくひとつの形になって来ました。それと同時に、自分の内面の感情表現の幅が広がって来たと思います。20代の頃は50歳ぐらいで指が回らなくなるかなとか思っていたのですが、60歳を過ぎても弾けているし、現在71歳ですが、まだできる」
演奏を続けるために心がけているのが内面の充実。
「映画でも本でも、あるいは自然の景色を見るでも良いのですが、あらゆることからエネルギーをもらって自分の中に蓄えることが大切です。その努力がないと退化する。現状維持で平行線というのは、退化だと思います。そして、そのエネルギーの中から、こういう風に演奏したいという欲求が沸き上ってくる。テクニックはその後から付いてくるものだと思うし、そういう心がけを大事にして行きたいですね」
LIVE INFORMATION
荘村清志デビュー50周年記念リサイタル
○6/23(日)六花亭札幌本店 ふきのとうホール
○6/27(木)28(金)浜離宮朝日ホール(荘村清志スペシャルプロジェクトvol.3)〈完売〉
○7/21(日)宗次ホール(名古屋)
○9/21(土)サンポート高松 第1小ホール
○11/17(日)川口リリア 音楽ホール
○12/1(日)青嶋ホール(静岡)
○12/14(土)アムールホール(神奈川・大和)