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日本ギター界の第一人者とイタリアの名門アンサンブルの幸福な出会い

 今年10月の日本公演で初共演を果たした荘村清志イ・ムジチ合奏団が、セッション録音による新譜を発表する。荘村、アントニオ・アンセルミ(イ・ムジチの若きコンサートマスター)、フランチェスコ・ブッカレッラ(同団チェンバロ奏者)が一堂に会した今回のインタヴューは、公演と録音を終えた直後に収録。初共演とは思えない親密さと強固な信頼がひしひしと伝わってきた。

荘村清志 荘村清志&イ・ムジチ合奏団 -夢の共演- ユニバーサル(2016)

――一連の共演を終えての感想は?

 「2日間のリハーサルをして公演。その後、2日間のセッション録音を経て再び公演を行いました。初共演なので最初は探り合いも少々ありましたが(笑)、徐々に信頼関係が強まり、アンサンブルも深みを増していきましたね。そして最後の公演では、僕の意図に完璧に寄り添ってくださって。その思いやりが本当に嬉しく幸せでした」(荘村)

 「私たちも類い稀なギタリストと共演できて、大きな喜びでした。一緒に音楽を創り上げる中で生まれた渾身のエネルギーは、日本の皆様にも伝わったことでしょう」(アンセルミ)

――CDの収録曲には、日本公演でも共演したヴィヴァルディの協奏曲(RV.93)とジュリアーニの協奏曲第1番が含まれていますね。

 「どちらも昔から大好きな作品でした。私は19歳の時に演奏旅行でイタリア全土を旅したことがあるのですが、列車の窓から見えたミラノの冬の風景は、ジュリアーニの第1楽章に通じる美しさを感じます。ヴィヴァルディの協奏曲は、第2楽章の優雅なトリオが有名ですが、両端の第1&3楽章もよくできていて構成力が高いのも魅力ですね」(荘村)

 「協奏曲は、ソリストと楽団が感情や考え方を分かち合うことが不可欠。私たちは荘村さんが奏でる最初の一音を聴いた時から抜群の相性のよさを感じましたし、この2曲の演奏史に新たな1ページを開けたと自負しています」(ブッカレッラ)

――もうひとつの共演収録曲は、キューバの作曲家ブローウェルが1972年公開の同名映画のために書いた《11月のある日》。「イ・ムジチ編曲」のクレジットがとても目を引きます。

 「私や福田進一さんがブローウェルの作品を好んで取り上げる機会が多いこともあり、日本での知名度が高くなってきました。でも今回は、イ・ムジチの皆さんからの提案だったんですよ」(荘村)

 「この作品はモーツァルト的とも言えるシンプルで深みのある構成と親密な曲想が魅力。また、ヴィヴァルディやジュリアーニの作品ともいい意味で対照的なので選びました。編曲は私たちの作ではなく、友人がイタリアの図書館で見つけてくれた楽譜なんです。先に述べた原曲の魅力がとてもよく活かされていると思います」(アンセルミ)

――当盤にはこの3曲に加え、荘村さんのソロによるD.スカルラッティの鍵盤楽曲のソナタ3曲と、フレスコバルディ《アリアと変奏》も収録されていますね。

 「スカルラッティのソナタ3曲は、ト長調の2曲を私の恩師ナルシソ・イエぺス先生が、ホ短調の1曲をアンドレス・セゴビアがそれぞれ編曲した楽譜を使いました。あと、フレスコバルディもセゴビアの編曲ですね。いずれの原曲も撥弦楽器のチェンバロなので、同属楽器のギターには弾きやすく、自然体で作品と向き合えました」(荘村)

――今回の成功を受け、日本の音楽ファンは早くも次回の共演や録音を期待していると思いますが…

 「ヴィヴァルディがリュートやマンドリンのために残した作品はもちろんですが、機会があれば南米もいいかなと思って。ギターと弦楽のために書かれた素晴らしいオリジナル作品が沢山あるんです」(荘村)

 「私たちも近年はピアソラなどを積極的に取り上げているので、とても魅力的ですね。あと現代イタリアだと、カステルヌオーヴォ=テデスコがギターと弦楽四重奏のために書いた五重奏曲の傑作があるので、それを編曲するとか・・・。話は尽きませんね!(笑)」(ブッカレッラ)