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変拍子なのに〈ポテトサラダが食いてえ〉しか言っていないZAZEN BOYS“ポテトサラダ”

――3曲目はZAZEN BOYSの“ポテトサラダ”。

LEO「レコーディングはこの曲がいちばん大変でしたね。曲の拍子もタイム感もトリッキーだから」

シゲクニ「かなり時間がかかった。変拍子だからしっかり意識しないとどこがアタマだかわからなくなってしまう。とはいえ、頭を使ってばかりいて守りに入っちゃうと演奏の攻撃性がなくなっちゃうし、攻めつつ冷静に、ってバランスの取り方が難しかった」

Photo by Jun Tsuneda

――ドラマーとしてこの難曲にどう対しましたか?

LEO「白根さんは余裕でしたよね?」

白根「余裕じゃないよ(笑)。かなりトリッキーなリズムなので、けっこう考えてやって、ホント知恵熱出ましたよ。ふだんこういうのはあまり叩かないんでね。ただ、こっちは考えて考えてやっているんだけど、歌詞が〈ポテトサラダが食いてえ〉しか言ってなくって。だからそれがどうしたの?って」

一同「(爆笑)」

白根「イライラしてましたよ。それをストレートにぶつけたのがあの演奏ですよ」

LEO「なるほどね。歌詞にイラついてたんだ」

白根「でも、あれが向井(秀徳)さんの美学だからね。あの歌詞にトリッキーなオケを合わせるところがね。そういう意味ではZAZEN BOYSの良さを再発見する機会でもありました」

LEO「この曲のドラム・トラックを聴いていると、めっちゃシャッフルしていて面白いんですよね。オリジナルとはまったく別の曲に聴こえる。それが全体に溶け込んだとき、独特のグルーヴが出てるなと思えた。

アレンジしている段階では、NYのグルーヴィーなポスト・ハードコア・バンドの感じをイメージしてたんだけど、材料を組み合わせてみたら、なんでか知らないけどこういう面白い味になったから良かったなと」

 

ミクスチャー・バンドとして挑んだ呂布カルマ“ヤングたかじん”

――4曲目の呂布カルマ“ヤングたかじん”がまたスゴイ。個人的にはこのEPで最高の出来じゃないかと思っているんですが。

LEO「あぁ、そうですか。ラップ・ソングをこのバンドでカヴァーすることがなかったですけど、そもそもミクスチャー・バンドっぽさが強いバンドだと思っているので、やることに関してはすごく自然ではありましたね」

『6 Japanese Covers』収録曲“ヤングたかじん”

――つまりLEO IMAIバンドとしてはある意味で王道の一曲と言えると。

LEO「そうですね。これまで呂布カルマのライヴでこの曲を何度となく聴いていて、歌詞は所々しか聴き取れないんだけど、そこにはすごいインパクトとユーモアと知性が感じられた。サビもキャッチーだし、アルバムを買ってじっくり聴いたらトラックはDJシャドウ的な要素が感じられるし、とにかくカッコいいなと。

カヴァーする候補は他にもありましたが、この代表曲を採り上げることで多くの人が興味を示してくれるんじゃないかと思いまして。あと歌詞をしっかりおぼえて、って作業をやりつつ、なんか高校生の頃に戻った感覚がありましたね」

――その感覚って他の曲のときにもあったんですか?

LEO「何曲かは。でもその感覚を鮮明におぼえたのがこの曲でしたね」

 

普遍的なメロディーの前野健太“ファックミー”
〈一緒にやろうぜ!〉という思いを込めたペトロールズ“雨”

――なるほど。次は、彼の曲をやるならこの曲しかないだろ、と言っていい、前野健太の“ファックミー”。

LEO「この4人で初めてライヴをやったのが京都の磔磔だったんですけど、そのときの対バン相手が前野さんだったんですが、とにかく面白い人だなと。ライヴ後、いろいろ喋ってみたら、これは面白い!と思い知らされました」

岡村「そのとき彼は弾き語りだったんですが、リハで〈ファックミ~〉と始まったんで、おいおいちょっと待てよ!と驚いた(笑)。で、話をするうちに、こいつアホやんってすぐわかった。似たような不真面目さを持っていることもわかったし。

以前の〈大都会〉ではバンド・スタイルで出てもらってるんですが、そのときにLEOは“ファックミー”を前野さんバンドで歌って、前野さんは“Tokyo Lights”をLEO IMAIバンドで歌ったんですよ」

LEO「そのとき彼のバンドに入ってこの曲を歌わせてもらったんですけど、とにかく気持ち良かったんです」

『6 Japanese Covers』収録曲“ファックミー”

――曲の世界観もしっくりきた?

LEO「そうですね、メロディーもしっくりきたし。今回アレンジはかなり変えてますが、ものすごくキャッチーな歌詞だし、メロディーも普遍的な良さがあって。どんなコードを当ててみてもこれは前野健太の曲だという揺るぎないものがあるので、思いっきり遊びました」

――キャッチーで普遍性の高い曲ということでは、最後に控えているペトロールズの“雨”もそうですよね。

LEO「静かで、EPのアウトロっぽい感じになってますね。いずれは〈大都会〉シリーズでペトロールズと一緒にやりたいと思っていたんです。ま、この曲をやってくださいよ、って彼らへのメッセージですね、このカヴァーは。やってください、というか、やろうぜ!って感じかな」

シゲクニ「回りくどいな(笑)」

LEO「彼らのトリビュート・アルバムにも参加しているし、そういうコネクションのあるグループなんです」

※2017年のコンピレーション『WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?』にて〈LEO今井+呂布〉名義で“シェイプ”をカヴァー