2年ぶりとなる8作目。前作同様にセルフ・プロデュース、かつ今回はすべての演奏と録音、ミックスもみずから担当。ドリーミーな“マイ・フォーション”、ムード歌謡“ながた屋の大将”といった1~2分台の楽曲が大半を占め、それらの小品に、華々しさとは無縁ながらも喜怒哀楽に添い堂々と暮らす人々の輪郭を、前野は活き活きと描く。シンセウェイヴから弾き語りへと移行する“さよならは言わない”、ゴスペル調の表題曲など音楽的にも聴きどころは多いが、物語や情感に即した音を探っていくと、おのずとユニークかつ幅広いサウンドになったのだろう。作品全体に漂う夏の匂いもたまらない。