Corneliusの映像作品「Mellow Waves Visuals」と、リマスターされた『The First Question Award』『Point』の3作品が同時リリース。これを記念したイベントが、小山田圭吾みずからが選盤を担当したスペシャルなポップアップ・ストアも話題を呼ぶタワーレコード渋谷店で7月30日に開催された。内容は〈Mellow Waves Tour 2018@Tokyo International Forum〉の爆音上映。プラス、小山田と『Mellow Waves』ツアーを撮影した映像ディレクターの村尾輝忠、ライター/編集者の松村正人の3者によるトークという2本立てだ。冗談を交えながら進行した当日のトークの模様をお伝えしよう。
Cornelius 『The First Question Award』 ワーナー(2019)
村尾輝忠がCorneliusを撮るときに考えていること
松村正人「まず村尾さんにお訊きしたいのは、Corneliusのライヴの撮影は他のアーティストとは違うということです。Corneliusの場合、バックに映像が流れているわけじゃないですか? 普通のコンサートを記録に収める以上に工夫が必要な気がします」
村尾輝忠「映像にもストーリーがあるので、その理解を妨げないようにしないとけないんですね。その一方でミュージック・ビデオと同じになってはいけないので、ライヴ映像ならではの表現をします。
いま鳴っている音、いちばんフィーチャーしたい音を鳴らしている人を映像で切り取って、音楽を理解しやすくする――そういうライヴ映像ならではの編集とストーリー性を両立させなきゃなって。それがCorneliusを撮るときにいつも考えていることですね。
あと、メンバーみなさんの立ち位置が変わらない、というのはあります。動かないですよね?」
小山田圭吾「うん。まったく」
一同「(笑)」
小山田「動けないんです。やることは多いし、曲間も全部決まっているので。その時間以内に次のセッティングしなきゃいけないとか、水を飲まなきゃいけないとか」
松村「水を飲むのもパフォーマンスの一部なんですね(笑)。映像を観ていると、それぞれの見せ場をちゃんと抜いていく感じがあって、知り尽くしているように感じます」
小山田「『Fantasma』のアメリカ・ツアー(2016年に開催された『Fantasma』再現ライヴ)の頃からずっとやっているからね」
村尾「小山田さんのライヴ映像作品はMETAFIVEからやっています(2016年作『METALIVE』)。もともと僕はSPACE SHOWER TVでブライアン・バートン・ルイスの番組をやっていました。Corneliusのファンであればご存知だと思いますが、小山田さんとものすごく繋がりの深い方です。なので、小山田さんとは繋がりがありました。METAFIVEのライヴ撮影はSPACE SHOWER TVが共催だったので担当しました」
松村「『Fantasma』ツアーの撮影は?」
村尾「ツアーをちゃんと記録しておきたいという希望があったからですね」
感謝の気持ちを現金で伝える?
松村「それで、今回のツアーにも同行する流れになったと。今回のドキュメンタリーは村尾さんがお客さんの反応をたくさん撮っていらっしゃいます。それは世界の人たちがCorneliusのことをどう捉えているのかを記録しておきたい、という意図から?」
村尾「そうですね。Corneliusは〈日本でいちばん過小評価をされている〉くらいの感じがあるんです。海外はそもそも音楽を好きな人が多いし、年を取っても音楽を聴くことをやめない。みんなCorneliusのことを深く理解していて、ライヴに来る待っていた感じがありました。感想もすごく多様ですし、それを聞くのは楽しかったですね。
プラスティック・オノ・バンドで小山田さんのことを知って衝撃を受けたというヒッピー世代のおじいさんもいれば、アニメが好きで、『攻殻機動隊』のサントラ(2013年作『攻殻機動隊ARISE O.S.T.』)に衝撃を受けて好きになった人もいる。それがおもしろいですね」
小山田「リアクションがやっぱり、明らかに日本とは違うところがおもしろいです」
松村「例えばどういう反応ですか?」
小山田「ライヴが終わってあいさつをしていたら、何かを渡そうとしてきた人がいたんです。で、受け取ってみたら現金だった」
一同「(笑)」
松村「おひねりで具体的にありがたみを伝えるという。いまだとちゃんと確定申告しないとマズいことになりそうですね(笑)」