スムースな耳触りのなかに間違いなくある王道感。徐々にソウル/R&Bへと接近してきた3人がみずからの音楽と素直に向き合って鳴らしたサウンドは、日常使いに似合う心地良さで……

素直に、自然体で

 『Ghost In My Place』『WIDE AWAKE』『BY YOUR SIDE』という3枚のEPを経て、FIVE NEW OLDが約2年半ぶりとなる新アルバム『Too Much Is Never Enough』を完成させた。ポップ・パンク/ラウド・シーンを出自に持ちつつも、〈特定のジャンルにこだわりはない〉というスタンスで近年はソウル/R&Bに接近していたが、本作はついに〈FIVE NEW OLDというジャンル〉を確立したと言うべき、会心の仕上がりとなっている。

 「自分たちがこれまでやってきたことの集大成になったと思ってるんですけど、何をもって〈集大成〉とするかって、自分たちのやりたいことをより素直に出せるようになったっていうことだと思っていて。今までは自分たちのなかで目標を設定したら、多少無理してでも、そこからブレないようにやってたんですけど、今回は出てきた曲がいちばん活きる方向に素直に向かえるようになったと思います」(HIROSHI NAKAHARA、ヴォーカル/ギター)。

 「4曲入りのEPを3枚作ってきて、それは毎回〈全曲リード〉みたいな気持ちだったから、フル・アルバムってなったときに〈どこにどう力を入れればいいのか?〉っていう不安もあったんですけど、実際に作りはじめてみたら、今まででいちばん引っ掛かりなく、スムースに出来たアルバムになったなって」(HAYATO MAEDA、ドラムス/コーラス)。

 「レコーディングの仕方もこれまでと違っていて、前はラインで録ることが多かったんですけど、今回はみんなでレコーディング・スタジオに入って、実際にアンプから音を出してアナログテープで録ったんです。なので、あとから修正することもそんなになくて、より素直に、自然体で取り組めたと思います」(WATARU OMORI、ギター/キーボード/コーラス)。

FIVE NEW OLD 『Too Much Is Never Enough』 トイズファクトリー(2018)

 幅広い音楽性で現代のミックス・カルチャー感を体現しつつ、アルバム全体に通底しているのは〈必要な音だけが確信を持って鳴らされている〉という点。それは〈身近に溢れる情報やモノ、人との繋がりのなかから、苦労してでも手に入れたいような本当に大切なものを選んでいこう〉という作品のメッセージともリンクするものだ。

 「アナログで録ってみると、縛られてると思ってなかったことで実は縛られていたことに気付かされたというか。デジタルで録ってたときはPC上の区切りに自分たちを詰め込んでたんだなって思って、今回はすごく解放された感覚があったんですよね。〈数値化できない良さ〉みたいなところで僕たちは音を鳴らしていて、そういう意味でもトゥー・マッチすぎないほうが、より本質的で、完璧に近いのかなって。いろんな情報に囲まれていることに改めて気付かされると、ライフスタイルとか〈生き方〉に関しても、束縛から解放されたような気分になりました」(HIROSHI)。